女子200メートル個人メドレーで優勝した寺村美穂選手(21)は、セントラルスポーツの後輩です。彼女の4年間を思うと、五輪代表に決まって本当にうれしい気持ちです。

 この種目で注目されたのは日本記録保持者の渡部香生子選手。その大本命に自分のレースをさせなかった。前半からグングン飛ばして、相手の得意な平泳ぎの前に大きなアドバンテージを作りました。そのまま逃げ切れたのは、駆け引きにも勝ったということでしょう。岡田昌之コーチは「調子がいいからアドバイスもしなかった」というほどでした。

 4年前の五輪選考会は2位に入ったのに派遣標準記録を切れなかった。悔しそうでした。その直後にひざの半月板を手術。去年、2度目のメスを入れています。キックが蹴れないので平泳ぎの練習が今年までまともにできなかった。もともと平泳ぎが専門で、メドレーの中でも得意種目のはずなのに、歯がゆかったと思います。

 それでも明るさを失わなかった。いつも笑顔で大きな声で「大丈夫です」って。繊細なところもあるけど、人に気を使わせない性格です。岡田コーチとの強い信頼関係も回復には大きな助けとなったはずです。

 2位で五輪を決めた今井月選手ら、10代の選手が脚光を浴びていますが、寺村選手が目立つのはここから。リオ五輪では決勝上位で戦える力が十分あります。しっかり見守りたいと思います。(伊藤華英=北京、ロンドン五輪代表)

 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。00年日本選手権に15歳で初出場。01年世界選手権で初代表入り。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪は自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程。173センチ。