新設の3大陸対抗団体戦で、アジア代表の宇野昌磨(18=中京大)が、国際スケート連盟(ISU)公認大会で史上初の4回転フリップを決めた。また、自身初のSPでの4回転ジャンプ2本にも成功。自己ベストを12・75点も更新し、歴代2位に相当する105・74点をマークした。男女各3人のSPで争う第1日はアジアが優勝した。

 「賭け」だった。宇野の最初のジャンプは初挑戦の4回転フリップ。4月頭から本格的に取り組んできたが、試合直前の練習で全く成功していなかった。勢いよく左足で踏み切り、軸がぶれてもしっかりと氷上に降り立った。演技後は「びっくりしています。運がよかったという気持ち」とその1本を夢のように振り返った。まだ18歳。シニア1年目の最終戦で、フィギュアスケート界の歴史に名を刻んだ。

 もともと“跳べない”選手だった。ジュニア時代から「高橋大輔2世」と呼ばれ、美しいスケーティングと天性の表現力を持っていた。一方で、ジャンプはなかなか身につかない。男子必須の3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)の習得に5年を要した。2年前、ふと4回転トーループを成功したのを機に3回転半も出来るように。一気に世界で戦える選手に成長した。

 14年4月からは、ハンマー投げの室伏広治が中京大に創設したアスリート競技力向上機関の高谷温子トレーナーとともに、跳べる体作りに励む。体幹を鍛え、右側ばかり力の強かった体のバランスを整えてきた。陸上など他競技のトップ選手も指導する高谷氏は「鍛えたものを動きにつなげる天性の感覚がある。なかなかいない」と驚く。しかも「伸びしろがたくさんある」。まだ18歳。進化は計り知れない。

 歴代最高記録を持つ羽生結弦の背中も見えてきた。今まで4回転はトーループ1種類だったが、これで2種類の羽生に並んだ。公式練習ではサルコー、ループも成功させたことがあり、来季3、4種類に増える可能性は十分にある。この日は4回転-3回転連続を含む3つのジャンプを成功させるなどノーミスの演技でISU史上3人目の100点超えも達成。それでも「もっと上を目指していきたい」と満足はない。「これが及第点になるように、練習から基準を上げる」と世界唯一の技を磨いていく。

 ◆現役選手の4回転の種類 羽生と世界選手権王者のフェルナンデスは、トーループとサルコーの2種類。ループ習得中の羽生はエキシビションなどで何度も跳んでおり、史上初の試合での成功も近いとみられる。中国の18歳金博洋は唯一トーループ、サルコー、ルッツの3種類を持ち、16年4大陸選手権のフリーでは史上初めて試合で3種類4本の4回転を成功させた。