日本代表のエース乾友紀子(25=井村シンクロク)が五輪メダル奪還へ、進化を証明した。五輪種目のデュエット、チームのテクニカルルーティン(TR)だけでなく、非五輪種目のソロフリールーティン(FR)、TRと1日4種目に出場。すべて1位と安定した演技を披露した。昨年は大会中に心が折れかけたが、心身ともにレベルアップ。井村雅代ヘッドコーチ(HC)からも成長を認められた。

 心が乱れた昨年とは違った。乾はソロTR、FR、デュエット、チームTRと計4種目をタフに演じきる。最後のソロFRのテーマは「鳳凰(ほうおう)伝説」。長い手足を速く、多彩に動かし、人々に勇気と希望を与えた伝説上の鳥である「鳳凰」を表現した。

 昨年は大会中に弱音を吐き、泣いた。井村HCからは怒鳴られたが、その夜に改善策も授けられた。「心技体がすべてそろう日は少ない。人間に秘められた精神力の強さでカバーしなさい」。その言葉で何とか大会を乗り切ると、昨夏世界選手権では7種目出場し、4個の銅メダルを得た。

 「とてもハードな毎日を乗り越えて自信がついた」。五輪種目のデュエット、チームのプログラムは、メダル奪還へ、先月の五輪最終予選から大幅に変更。まだ未完成の段階だったが「胸を張って五輪に行く。元気を与える演技を心掛けた」と懸命に仲間を引っ張った。

 いつも厳しい井村HCからは「1年前に怒ったことが懐かしい。成長してタフになった」と評価された。チームは04年アテネ、デュエットは08年北京大会を最後にメダルから遠ざかる。たくましくなったエースの存在は、メダル奪還への力になる。【田口潤】