東海大出身のリオデジャネイロ五輪代表選手、コーチらによる報告会が19日に神奈川県内の同大キャンパスで開かれ、柔道男子90キロ級金メダリストのベイカー茉秋(22)が会場をどよめかせた。

 競技人生での挫折について司会者から聞かれると、申し訳なさそうに「挫折はなくて、すいません…」。続けて「これから経験するんじゃないかなと思ってます。正直なくて、すいません。順調にきています。でも、そういう人もいて良いんじゃないかなと」と遠慮がちに述べ、会場に感嘆する声が響いた。

 その後も、ベイカーのリオ五輪でのさらなる仰天エピソードが明かされた。まずは柔道男子の井上康生監督。男子90キロ級の決勝戦を控えたベイカーの姿を直前の練習場で見て、うなった。大きな畳の真ん中で椅子に座り、1人おにぎりを食べていた。「他の選手たちは精神統一しているなかで、彼だけ畳の真ん中で椅子に座り、ピクニックかという感じで食べていた。他の選手が『なんだこいつは』と思わせるような、オーラを発していた」。その時のことを苦笑して振り返ったベイカーは、「椅子は前日のアップで腰を痛めて、背もたれがあるとだいぶ楽だったので。僕も堂々と食べたくなかったんですけど、腰が痛くて」と弁明しながらも、「負けることは考えてなかった。本当に勝つだけで、ポジティブに考えるだけでした。緊張はなかった」と大物らしく言いのけた。

 ちなみにおにぎりは2個食べ、バナナも1本食べたが、「準決勝が終わって決勝まで1時間くらい空くというので、だったらエネルギーのために食べたんですが、決勝時間が早くなって30分くらいしかなくて、これでは5分間戦ったら(胃袋から)出てくると。なのでトイレに入って吐いてスッキリして、これはいけるなと。緊張で吐いたわけではないです。そうしたら優勝できました」とニコリとしてみせた。

 井上監督に続いたのは女子70キロ級金メダリストの田知本遥(26)。ベイカーと同日に試合だったが、その日の朝に準備を整えて選手村から会場へ移動するときに朝食会場帰りのベイカーとすれ違った。時間が迫っても焦りや緊張感を感じない平静な姿に、「なんか『うっ』となりました、自分が。なごみました」と衝撃を受けたという。練習場で椅子に座る姿も目撃しており、「こういう選手もいると客観視できる自分もいたので、過緊張とかはなかったのかな」と笑顔で振り返っていた。