エース渡部暁斗(28=北野建設)が、初の個人メダルとなる銀メダルを手にした。前半ジャンプ(ヒルサイズ=HS130メートル)で3位につけ、後半距離(10キロ)で順位を上げた。日本勢の個人メダルは、99年ラムソー大会(オーストリア)で荻原健司が銅メダルを獲得して以来18年、9大会ぶり。渡部善斗(北野建設)は15位、渡部剛弘(ガリウム)は19位、永井秀昭(岐阜日野自動車)は29位だった。ヨハネス・ルゼック(ドイツ)が今大会3つ目の金メダルを獲得した。

 18年ぶりに複合で日本人メダリストが誕生した。渡部暁が、銀メダルを獲得した。99年の荻原健以来の個人メダル。新たに歴史を刻んだが、ゴール後は右手を軽く挙げただけで喜びは控えめだった。「ラッキーだった。取ってやったというよりは取れて良かったという感じ。いろいろかみ合えばメダルは取れると思っていたので」と、世界の頂を目指すからこそ納得はしなかった。

 前半ジャンプで3位。気温が上がり重くなった雪質だった後半距離を54秒差でスタートした。序盤から4人で先頭を追い7・5キロ過ぎで捉える。その後2人が脱落し、3人に絞られると、最後の上りでW杯個人総合首位のルゼックがスパート。突き放され4・8秒差でゴールした。「最後は力の差が出た」と悔しそうに振り返った。

 昨年5月後半の合宿中に自転車で転倒、左手のひらを骨折した。思うような調整ができず、調子が上がらなかったが、シーズン中にパワー不足を補うため食事量を増やした。2キロ増量に成功し、得意の距離が復調。勝てないレースが続きながらも、力を使わず効率の良い走りを求め、スピード能力を1段上げ、今大会前の2月15日の札幌大会で2季ぶりの優勝。着実に階段を上り大舞台に合わせた。

 来年の平昌五輪の前哨戦を制し、ソチ五輪で逃した日本初の金メダルが見えてきた。「しっかり戦える実力をつけたい」。日本のエースは歴史の扉を何度も開いてみせる。【松末守司】