世界70位の西岡良仁(21=ミキハウス)が大逆転で、マスターズ大会自身初の16強入りだ。10年ウィンブルドン準優勝で、同14位のベルディハ(チェコ)に、1-6、2-5の崖っぷちから1-6、7-6、6-4で勝ち、4回戦進出。第2セットの3-5ではマッチポイントを握られたが、それもはね返し、元世界4位からの金星だ。4回戦では同3位のバブリンカ(スイス)と対戦する。

 驚異の粘りだ! 残り1点で敗退の崖っぷちから、西岡が不死鳥のようによみがえった。気温35度の猛暑の中、諦めず、球に食らいつき、無我夢中にコートを走り回った。「正直勝てるとは思わなかった。最後まで頑張ることだけ考えてプレーした」。最後はサービスエース。大逆転の瞬間、膝から崩れ落ちた。

 予選から数えて5試合目。今年は、実力がつき勝ち星を重ねた。その分、試合数が増え、身長170センチとトップ100で最も小柄な体格では、連戦が続くと「正直きつい」とこぼしていた。この日は右ひざにサポーター。動きは鈍く、あっという間に1-6、2-5まで追い込まれた。

 3-5でベルディハにマッチポイントを握られた。しかし、じわじわと挽回する。相手は、すでに勝利を信じて疑わない。その分、攻撃の手が緩んだ。隙を突いた西岡は2-5から4ゲームを連取し抜き去り、タイブレークで第2セットを奪取。ベルディハは怒りでラケットをたたき折った。

 こうなれば追う者の強みだ。元世界4位の相手は精神的に落ち込み、ミスを連発。西岡は武器の緩急と粘りで、簡単なミスを出さなかった。「トップ選手に対しても勝ちにいく気持ちになっている」。その言葉どおり、攻守がかみ合い、金星につなげた。予選決勝で敗れたがラッキールーザー(幸運な敗者)で本戦に出場。しかし、運ではなく実力で快進撃を見せている。

 この勝利で、世界ランクは初の50位台が濃厚だ。2回戦で勝った身長211センチのカロビッチに続き、ベルディハは196センチ。まさに柔よく剛を制す。体格では劣るものの、西岡こそが“小さな巨人”だった。