違法カジノ店での賭博行為で無期限の試合出場停止処分から復帰したバドミントン男子の桃田賢斗(22=NTT東日本)が涙の復活優勝を果たした。

 決勝で日本代表の上田拓馬(28=日本ユニシス)と対戦。21-13、14-21、21-19の2-1で大接戦を制した。

 シーソーゲームを制すると、桃田はひざまずき、顔をコートに伏せる。しばらく動けない。約10秒後に立ち上がると、頬をゆがませた。ユニホームであふれるものを拭く。「辛いときに支えてくれ、バドミントンの環境をつくってくれた方への思いのすべてが込み上げてきた」。表彰式でも赤くなった目から涙は止まらなかった。

 相手は日本代表で、処分前は長く、代表でともに行動してきた上田。「お互い手の内を知っているので、簡単な試合にはならない」。前日に警戒していた通り、第2ゲームは終始劣勢で、14-21と、今大会5試合目にして初めてゲームを取られた。第3ゲームも大接戦。16-18から4連続得点で逆転。最後は相手のシャトルがアウトになり、21-19。2-1で、87分の長い試合を制して優勝した。

 この日は日本代表の朴柱奉監督も視察。俊敏な動きと粘り、強烈なスマッシュと、ブランク明けも変わらない実力もアピールできた。「今はどの大会が目標とかはない。それよりも相手への感謝などコートの中の振る舞いを見てもらい、応援したいなと思ってもらえる選手になりたい」。今後は7月の全日本実業団選手権(5日開幕、秋田)に出場。その後はカナダオープン(11日開幕)とUSオープン(19日開幕)の国際試合に自費で出場し、ポイントを稼ぎ、世界ランキングを上げていく。東京五輪金メダルへ、どん底から浮上のきっかけは確かにつかんだ。