男子シングルスでリオ五輪銅メダリスト水谷隼(28=木下グループ)が復活への1歩を刻んだ。バスティア・シュテーガー(ドイツ)に4-1で完勝し、2回戦に進出した。5日閉幕の世界選手権では13歳の張本に完敗。10日のロシアリーグ決勝も敗北した。20年東京五輪出場への危機感も増す中、今大会で浮上のきっかけをつかむ。

 闘志あふれるプレーが、少し戻ってきた。初戦完勝した水谷は軽く右手を握った。「最初はガチガチだったけど、最後は積極的に攻めていけた」。「張本ショック」から続く、悪い流れに一区切りをつけた。

 世界選手権で完敗した張本戦を映像で見返した。一方的に攻められる展開。「食らい付いたり、ガッツもなかった」。直前の合宿で、利き腕の左に痛みが発症していたが、言い訳はしない。張本に負けたことよりも「やれることはあった。爪痕すら残せなかった」ことが許せなかった。

 昨年の五輪で派手なガッツポーズで注目されたように「勝ちたい執念は人一倍ある」。張本戦では、左腕の痛みを抱えていたとはいえ、最後まで弱気な自分がいた。「今1度、昔を思い出して一から頑張らないと」。13歳への敗北で、原点の気持ちを取り戻した。

 1月の全日本選手権で史上最多9度目の優勝も、今は若手の突き上げに危機感を募らせる。「東京五輪出場も難しいと思う」。従来通りなら出場枠は3人でシングルス出場は2人。今大会で完全復活できるとは思っていないが「努力を重ねていけば、いつかチャンスはくる」。卓球ではベテランの28歳は、まだ世代交代を許さない。【田口潤】