世界9位の錦織圭(27=日清食品)が辛勝発進した。同34位で元トップ10のフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)に6-7、6-3、6-4の2時間24分、フルセットで逆転勝ちした。錦織にとっては、7月3日開幕のウィンブルドン前の唯一の芝の公式戦。2回戦では8強入りを懸け、同38位のハチャノフ(ロシア)と対戦する。

 最も球足の遅い赤土から、最速の芝への転換は、これまで錦織のアキレス腱(けん)だった。この日も、相手のサーブに押され「初めての試合で簡単ではなかった」。負けてもおかしくなかった逆転勝ちを「諦めずにプレーできた」と振り返った。

 カギは最終セットの第2ゲーム。サービスゲームで0-40と、3本連続のブレークポイントを握られた。芝では1回のサービスダウンが致命傷となる。しかし、そこを逃れると、第7ゲームで相手のサービスゲームを破り、そのまま押し切った。

 今大会は2年連続でケガを発症した鬼門だ。15年は準決勝で左ふくらはぎを痛め途中棄権。昨年は初戦で左脇腹を痛め、2回戦を戦わなかった。その影響で、続くウィンブルドンは、15年が2回戦前に棄権。16年は4回戦まで進んだが、4回戦の試合中に棄権した。最近2年間の芝のコートで計4度の敗退がすべて棄権だ。赤土とは全く違う足の運びを要求され、負荷がかかる筋肉も違う。加えて、球足が速く、ビッグサーバーに有利で、それを受け止める体も要求される。

 プレー全体で見れば、絶好調ではなくとも決して悪い出来ではなかった。問題は今季ずっと引きずっている思い切りの悪さと仕掛けの遅さだ。勝負どころで勝負に行けず、試合を長引かせることにつながっている。

 「チャンスが少ないので、重要なポイントを取りきることが大事」。2回戦の相手は伸び盛りのハチャノフ。昨年の全米2回戦では、1セットを落としている。「毎年、芝コートでのプレーは挑戦。ケガをしないようにできるだけ勝ちたい」。今大会は芝に慣れるためベルダスコと組んでダブルスにも出場予定。上位進出を狙いつつ、3年連続となる悪夢の棄権は避けたい。