鉄棒で内村航平(28=リンガーハット)が、離れ技5つを入れた新構成を完璧に決め、15・750点の高得点で優勝した。既に代表入りしている世界選手権(10月、カナダ・モントリオール)では個人総合7連覇がかかるが、さらに鉄棒での2連覇も見えてきた。また、決勝の結果を受け、世界選手権代表候補8人が発表された。代表合宿を経て9月に4人に絞られる。

 内村が空中に体を浮かせ、再びバーをつかむ度、大歓声が起こった。カッシーナとコールマンの連続技など、自身初5度の離れ技を成功させ、着地も完璧。あまりの出来に観客席の方を向き、両手で何度も拍手をあおった。「いい演技だった喜びと僕たち選手は大きな拍手を求めているということを伝えたくて。離れ技は体操の醍醐味(だいごみ)。極めていきたい」と振り返った。離れ技は「できるなら6、7つやりたい」が、新ルールでできるのは5つまで。10月の世界選手権に向けた攻めの演技を初披露初成功させた。

 リオデジャネイロ五輪後プロに転向。8カ月のブランクを経て臨んだ4月の全日本、続く5月のNHK杯では調子は戻らず、技の難度を下げた中で何とか勝ちきった。それからさらに1カ月。新たな環境に慣れ、体のキレもようやく戻ってきた。3月から用意してきた構成での会心の演技に「体操って面白え、と思いました」と喜びがあふれた。

 日本代表の水鳥寿思監督も「このレベルをやれば、まず負けないでしょう」と金メダルに太鼓判。5つの離れ技は他の選手も実施する可能性があるが、内村には誰にも負けない美しさがある。「今日の演技が自信になりました」と内村。体操の花形、鉄棒の頂点も譲れない。【高場泉穂】