女子シングルス(車いすWH2)で山崎悠麻(29=調布市役所)が、世界ランキング1位のアムノイ・ワットゥタン(タイ)に20-22、21-18、21-18の2-1で逆転勝ちし、優勝を決めた。

 アムノイのラストショットがラインを割った瞬間、会場は大歓声に包み込まれた。バルーンスティックが鳴り響く。日本で初開催の国際バドミントン連盟公認の国際大会。客席を埋めた1500人近い観衆が山崎の優勝を祝福した。

 「最後は“お願い、出て~!”と思いながらシャトルを追いました。こんな素晴らしい舞台に立つことができて、優勝できて、本当にうれしいです」。コートでは目を潤ませていたが、報道陣の前に現れた時には満面の笑みだった。相手はこの日、すでにダブルス決勝を2試合戦っていた。粘り強くラリーを続けて持久戦に持ち込み、第2ゲーム以降にミスを誘発したのが勝因になった。

 車いすの競技歴はわずか4年。小2から中3までは健常者としてプレーしていたが、高1の時に交通事故に遭って両膝から下の感覚を失った。それ以降はスポーツとは無縁の生活。就職し、結婚して、2人の男の子の母親にもなった。しかし、13年の東京国体の際に車いすバドミントンを観戦したのをきっかけにコートに復帰。15年から日本選手権でシングルス、ダブルスを連覇し、同年の世界選手権シングルス8強。国際大会でも今回で3つ目の金メダル獲得になった。

 昨年11月のアジア選手権で中国選手の強さを目の当たりにし、チェアワークと筋力強化に取り組んできた。今大会に中国のトップ選手は不参加だっが、準決勝でも世界6位の韓国選手を破っている。「短い期間で世界1位やトップクラスの選手に勝てたんだから、自分でもまだまだ伸びしろはあると思います」と言葉もはずむ。

 アスリートであり、公務員としての仕事を持ち、妻であり、母親として子育てに追われる。多忙な毎日を送るが明確な目標が支えになっている。「息子たち(5歳、3歳)に東京パラリンピックを目指して頑張る姿を見せたいんです」。今年11月の世界選手権(韓国)、来年10月のアジアパラ競技大会(インドネシア)を経て20年東京で金メダル獲得へ。山崎の挑戦は続く。【小堀泰男】