種目別決勝の女子床運動で予選2位の村上茉愛(21=日体大)が14・233点で金メダルを獲得した。日本女子の金メダルは、54年ローマ大会で平均台優勝を飾った田中(現姓池田)敬子以来63年ぶり2人目で、同種目の優勝は初の快挙となった。男子跳馬で金メダルに輝き、2冠を達成した白井健三(21)と、日体大アベック優勝となった。

 史上初の10点満点が誕生した「コマネチ伝説」の地で、村上が舞った。大会アンバサダーであるナディア・コマネチさん(55)も見つめる中、1番手で登場。冒頭の4回ターンをきっちり回って波に乗ると、最大の武器であるH難度の「シリバス(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)」を完璧に着地した。上半身を柔軟に使った振り付けでも点を稼ぎ、高得点をマーク。後から出た7選手は誰も村上を上回れず、逃げ切り勝利を収めた。

 「1番目で周りを気にせずにできた。人生で一番良い演技。初めて有言実行できた」。村上が笑みを浮かべると、日体大でも指導する瀬尾京子コーチも「あれ以上のものは出せない」と称賛した。

 5年越しの悔しさを綿密な作戦で晴らした。高難度技をひっさげて頂点を狙った初出場の13年世界選手権では、表現力の部分で点が伸びずに4位。メダルにあと1歩届かないという悔しさは、今回の個人総合(4位)と種目別平均台(同)でも味わったが、最後には勝負種目で本領を発揮した。

 カギは曲と演技構成、振り付けを8月に変更したことだ。従来のアップテンポな曲からしっとりしたものにし、点を取りにくかったターンを中盤から冒頭に移した。ナショナルチーム合宿中に行われた資生堂のメーク教室では「大人ぽっいアイラインの描き方」を教わるなど、細部まで気を配ってアピールした。

 リオ五輪で同種目金メダルのシモーン・バイルス(米国)は1年間の休養中。予選トップのラーガン・スミス(同)は負傷で決勝を棄権した。「今回勝たないと東京は無理だと思っていた」(村上)。ライバル不在の中、パワーに劣るとされてきた日本女子のイメージを覆したのは大きい。

 20年東京五輪に向け期待は高まるばかりだ。「東京に向けて第1歩を踏み出せた」。何度も口にしてきた「床で金メダル」の夢がいよいよ現実のものとなってきた。【矢内由美子】