本田真凜(16=大阪・関大高)がGPデビュー戦で厳しい現実を突きつけられた。SPの新プログラム「ザ・ギビング」を実戦初披露したが52・60点で12人中10位。冒頭の連続ジャンプの転倒からミスが重なる演技に、浜田美栄コーチに「すごく甘い」と指摘された。12月のGPファイナル(名古屋)出場は苦しくなり、目標の18年平昌五輪へ早くも正念場だ。

 思わず目を閉じた。自己ベストを15点以上下回る52・60点のアナウンスにも、本田は悔しがるそぶりもない。感情を失ったかのように、放心状態でリンクを離れた。取材エリアでは蚊の鳴くような声で「明日頑張ろうと思います」としぼり出した。顔から血の気が消えていた。

 心待ちにしたGPデビュー戦に緊張は感じていなかった。満面の笑みで登場し、冒頭の連続3回転ジャンプ。ルッツの着氷時に粘ってトーループにつなげたが、尻もちをつくように転倒した。「ショート(SP)のミスは久しぶりで、切り替えられなかった」。中盤のスピンは回転数が足りず、4段階で最低のレベル1。最後のダブルアクセル(2回転半)は1回転半でまさかの0点となり「楽しい気持ちが裏目に出た。情けない演技」とうなだれた。

 予兆は午前7時15分からの練習にあった。9分遅れてリンクに立ち、調整は必要最小限。数日前に左臀部(でんぶ)を痛め、2本目の3回転ジャンプは左足で踏み切るフリップから右足のループに変更した。練習後にホテルへ戻る際は、手すりを頼りに会場の19段の階段を上った。だが浜田コーチは「心の影響だと思う。みんな言わないけれど、張っていたり(故障を)持っている。スポーツである以上、重かったり、違和感はある」と首を振り、厳しい言葉で総括した。

 浜田コーチ (スピンなど)拾えるものを拾っていないのは、きちっとした練習ができていないから。(その練習が100とすれば本田は)20ぐらい。すごく甘いから。私は(結果に)びっくりしていない。

 フリーの滑走順抽選が終わった薄暗い通路で、本田は浜田コーチと向かい合った。「今日で懲りるかもしれないけれど、また忘れるかもしれない。これも実力」という指摘を黙って受け止めた。信頼するコーチから求められた意識改革。GPファイナル出場は苦しくなったが、大きな壁を乗り越えていくしかない。【松本航】

 ◆GPシリーズのポイント 6大会のうち各選手・組(ペア、アイスダンス)が出場できるのは最大2大会。ポイントは1位=15、2位=13、3位=11、4位=9、5位=7、6位=5、7位=4、8位=3と設定されており、その合計で上位6人(組)がGPファイナル(12月7日開幕、名古屋)に出場できる。出場2大会とも表彰台争いをすることが、ファイナル進出に近づく条件となる。