東海大静岡翔洋が、5年ぶり10度目の優勝を飾った。15-12の接戦を制し、新人戦、県総体と決勝で敗れていた静岡聖光学院を破った。強力なFW陣を擁する静岡聖光学院に対し、低く鋭いタックルで対抗。ノーサイド間際もタックルで懸命に耐えて、勝利を手にした。全国高校ラグビーは、12月2日に抽選会(大阪)が行われ、同27日から大阪・花園ラグビー場で開幕する。

 後半29分、東海大静岡翔洋は窮地に追い込まれた。自陣ゴール前でマイボールのスクラム。ターンオーバーを狙う静岡聖光学院に押し込まれたが、高校規定の1・5メートル以上進んだため仕切り直し。その時点で、終了時間の同30分が過ぎていた。フッカー上柳凱(3年)は「次はやらせない」と、素早くフッキング。ボールをSH松浦貫介(2年)から受けたSO山川翔希(3年)が、タッチラインへ蹴り出した。瞬間、ノーサイドの笛が鳴り響いた。

 チームは新人戦、県総体、7人制の全てで準優勝だった。その悔しさをバネに、前半は15-7とリードしたが、後半はペースを握られて0点。それでも粘り抜いてシルバーコレクターの汚名を返上した。佐藤空翔主将(3年)は言った。「やっと、優勝できました。聖光のFWは強いのでそこで負けたら、BKの良さもでない。気持ちを入れて今日に臨みました」。

 両プロップ100キロ超の静岡聖光学院は、前半からラックからモールを作り、トライを狙った。対して、東海大静岡翔洋FW陣は、モールの先頭に立つ相手選手の膝を目掛けてタックルを重ね、進撃を止めた。後半27分からは自陣ゴール前にくぎ付けにされたが、低いタックルで耐えに耐えてトライを許さなかった。

 強豪チームとの合同練習が生きた。10月上旬、中部大春日丘(愛知)とユニット練習を重ね、FW陣は徹底的に密集の攻防を磨いた。「小さく、弱い」と言われてきたFW陣が大一番で輝きを放ち、真崎智央監督(34)は「トライはBK陣が取りましたが、今日はFWが体を張ってくれたことが勝因。後半は防戦でしたが、よく30分間持ちこたえた」と目を細めた。

 今大会は台風の影響で、決勝が準決勝から中1日で開催された。だが、全国大会でも抽選次第では1、2回戦が中1日の可能性がある。佐藤主将は「予行演習になりました。シード撃破を目指し、さらに練習していきたいです」と笑顔。チームは今日から、5年ぶりの花園へ走り始める。【大野祥一】