必ずトップに戻ってくる! 男子テニスで元世界4位の錦織圭(27=日清食品)が、日刊スポーツに独占告白した。錦織は8月に右手首の腱(けん)を負傷。それ以降、自ら口を開くのは初めて。けがの現状、リハビリの様子、復帰時期など初めて語った。また、けがについては裂傷もあったが、それ以上に問題だったのは尺側手根伸筋腱の脱臼だったことも明かした。【取材・構成=吉松忠弘】

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 15年3月に最高4位を記録した世界ランキングは、20日付の最新で22位に落ちた。12月29日に28歳となる錦織に「もうトップには戻れない」という声も聞かれる。しかし、錦織は、きっぱりと否定した。

 錦織 戻れると普通に思ってる。不安はない。(トップ10の)位置に3年ぐらいいたので自信はある。簡単ではないのは分かっている。この何年かは、復帰ですごく苦労している選手を何人も見ている。ただ、(戻れる)気持ちはぶれていない。そこは、何万人に言われようと変わらない。

 錦織は09年右肘の手術で、約1年、実戦から遠ざかった。その時に比べ、精神的なダメージも少ない。

 錦織 肘の後から、いつか(大けがが)くる構えみたいなものは(心の)片隅に毎年あった。自分がけがと闘わなくてはいけない人間だというのは常に持っている。だから、やっときたか(笑い)というのが20%ぐらいはあった。

 8月13日。米シンシナティの大会前にサーブの練習中、「プツッ」という音とともに右手首が悲鳴を上げた。腱の脱臼だった。

 錦織 今までにない痛みだった。手首が外れるような感じ。最初、診てもらった時は(完治に)3週間と言われた。全米も出られるかどうかで、そんなに悪くないかなと、1回はほっとした。その後、3~4人の医者から手術という言葉が出てきて。そこから不安と闘っていた。

 錦織の所属事務所IMGは、数十人の医者に連絡。日大医学部の医師を含む5人に絞り、意見を聞いた。最終的に、元女王クライシュテルスの手首を手術した手の専門医で、ベルギー・アントワープのフェルストレケン医師に治療をゆだね、手術をせず保存療法を選んだ。

 錦織 けがのおかげで新しい出会いや刺激的なことがあった。トレーナーが素晴らしくて、動き方の中での体の使い方や、気付かされる部分が多かった。いい体になりやすい感覚がある。だから、けがして良かったわけではないが、ポジティブに自然と思える。

 ベルギーのブレーにアパートを借り、クライシュテルスがつくったアカデミーで、1カ月ほど治療とリハビリに専念した。すでに拠点のIMGアカデミーに戻りコート上で球を打つ。リハビリ用に、通常330グラム前後だが、200グラムほどの超軽量ラケットを3本特注。球は、通常の空気圧の球をバックに、75%圧の軟らかい球をフォアとサーブに使用して練習中だ。

 錦織 回復度合いは順調。ただ、まだ(使ってなかったから)筋肉が痛くて、あまり楽しくはない。その痛みを超えないといけないのが今の試練。リハビリだと思っている。

 復帰はまだ決めていない。18年の数大会に出場表明をしているが、あくまで予定だ。

 錦織 どこに目標を掲げたらいいか不安で、いつ戻れるかと医者とトレーナーに聞いた。でも、今は考えるべきではないと言われた。このけがは、定めがつかない特殊なケース。手首は復帰に時間がかかるところだし。治った時が治った時。あと2カ月、もしかしたら3カ月ぐらい。1~2月とは考えているけど、1月は急な気もする。ただ、全く焦ってはいない。