カヌーの有力選手がライバル選手の飲料に禁止薬物を混入させる前代未聞の事態が起きた。ロシアの組織的なドーピング問題でスポーツ界が揺れる中、クリーンな大会を目標に掲げる2年後の東京五輪へ、開催国としての信頼や選手のイメージにも水を差した形だ。

 近年は国内でも禁止物質を含んでいると知らずにサプリメントなどを服用してドーピング違反となる例が相次いでいるが、今回は別次元のケース。関係者によると、加害選手は若手の台頭で焦りがあったという。舞台は日本一を決める大会。被害選手にドーピング検査で陽性反応が出た後は自らの責任を認めて反省しているそうだが、極めて悪質で五輪のフェアプレー精神に反する愚行と言わざるを得ない。

 カヌーはリオデジャネイロ五輪のスラロームで男子の羽根田卓也(ミキハウス)が銅メダルを獲得し、東京五輪へ選手強化やファン拡大に乗り出していた。その中での不祥事に、日本カヌー連盟幹部は「完全に裏切られた」と嘆いた。

 今後は熱を帯びる五輪代表争いで競技団体側にも入念な対応が求められる。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)関係者は「薬物混入を想定した対策も必要になる」と指摘した。