レスリング女子で五輪4連覇を果たした伊調馨(34=ALSOK)が、階級を大幅に下げて復帰を目指していることが7日、分かった。16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)以降休養していたが、今年に入って日体大で練習を再開。関係者によれば、休養中にひと回り体が小さくなったためにかつて五輪3連覇した63キロ級より10キロも軽い53キロ級で12月の全日本選手権出場を目指す見込みだという。国民栄誉賞に輝き、パワハラ騒動にあった最強レスラーが「小さくなって」マットに戻ってくる。

  ◇  ◇  ◇

 伊調がついに五輪5連覇目指して動きだす。リオ五輪後は各種表彰やイベント出席など多忙で練習時間もなく、日本協会の「17、18年世界選手権にはベテランは出場させない」という意向もあって休養していたが「何らかの形では関わりたい」と話していた東京五輪まで2年を切って、競技復帰を模索している。

 今年1月には栄和人前強化本部長によるパワーハラスメントが告発され、4月には日本協会の第三者委員会がパワハラを認定。練習環境が整っていないことが明らかになったが、その後はロンドン五輪前から指導を受ける田南部力氏が特別コーチを務める日体大で練習を再開。若手を指導するかたわら、自身も復帰に向けて汗を流していた。

 もっとも、この2年間で筋肉は落ち、見た目にも分かるほど体重も減っていた。アテネ五輪から3大会連続で金メダルを獲得した63キロ級はもちろん、減量したリオ五輪の58キロ級や東京五輪階級の57キロ級にも足りなくなった。57キロの下は53キロ。打倒伊調に燃える五輪女王の川井梨紗子は57キロ級での東京五輪出場が見込まれる。仮に吉田沙保里が復帰すれば「直接対決」もありうるが、53キロ級で復帰ならライバルも少ないとみられる。

 12月の全日本選手権は出場資格が必要。日本協会は「伊調の実績なら推薦で出場できる」とするが、実戦不足の不安もあるため10月13、14日に静岡で行われる全日本女子オープンで「試運転」する可能性も高い。練習を再開したとはいえ、汗を流す程度。「全盛期の5割程度」と話す関係者もいて、五輪5連覇への道は険しい。それでも、女子個人種目史上初の五輪4連覇を果たした実力は抜群。復帰戦には、世界の目が集まる。