日本ボクシング連盟の助成金不正流用疑惑や審判不正問題を告発した「日本ボクシングを再興する会」の鶴木良夫会長(68)らが8日、都内で記者会見し、山根明会長(78)が特定の県の選手を不正に勝たせるよう求める音声データの新証拠を公開した。1日も早い正常化のため、早急に日本連盟の総会を開催し、山根氏の除名と現職理事30人の解職を要求した。

 都道府県連盟幹部や元選手ら関係者333人の有志でつくる「再興する会」が、山根氏の審判不正への指示を裏付ける新証拠を公開した。録音は、16年2月に山根氏とされる人物が「接戦した場合、やっぱり奈良やな。それ反対につけた場合は『お前なめてるんか』てなってくるわけ」などと話している。山根氏は審判不正などの疑惑について否定しているが、録音が本物なら決定的な一打となりそうだ。アトランタオリンピック(五輪)代表の仁多見史隆氏は「これでは審判員が正常な判定ができない。フェアプレーのスポーツ界にあってはならない」と批判した。

 会見に先立って山根氏が「辞任する」と発言したことについて、鶴木会長は「辞任と言ったが、中身がはっきりしない。会長を辞めたのか、理事を辞めたのか、会員も辞めたのか。どう判断していいか、とまどっている」と話した。理事として連盟に残る場合、山根氏の影響力が残る可能性がある。菊池浩吉宮崎県連副会長は「告発状で挙げた項目の説明もまったくない。一方的に声明し、会見もせずに逃げた印象だ」と批判した。

 除名や理事らの解任を決議する臨時総会の招集を請求し、助成金流用などに対する厳格な処分を要望した。総会での決議には理事と、47都道府県連盟の各代表を合わせた総正会員の半数以上が出席し、3分の2以上の賛成が必要。連盟が開催を拒む場合は、裁判所に総会招集許可の申し立てを行う方針だ。鶴木会長は「現体制を入れ替えて民主的な組織、透明性のある組織を求めたい」と話した。

 また「五輪慰労金」の名目で、選手ではなく五輪選手団に加わった関係者に不明瞭な金銭が支払われていると指摘した。告発状に記した12項目など一連の疑惑は日本連盟が設置する第三者委員会で調査される方針だが、同会は公正さを危ぶみ、JOCなどの権限で実施されることを希望した。山根氏の「辞任」発言だけでは、事態は収拾しそうにない。