世界選手権王者の高橋侑希(24=ALSOK)が敗者復活戦から勝ち上がり銅メダルを獲得した。

 3位決定戦で中国選手に勝利するも、試合後は悔し涙があふれた。「金メダルを取れなかった。目標を達成できなかった。申し訳ない」。

 2回戦でカン・グムソン(北朝鮮)に5-9で敗れ、敗者復活戦に回った。その中で信じられないハプニングもあった。

 2-2同点。白熱した展開の中で“事件”は発生した。それは第2ピリオド開始から2秒たった時。会場のタイマーが突如として故障。試合の進行がストップした。スタッフが電気パネルをひっくり返すなど原因究明を急ぐも直らない。そのまま5分が経過。復旧のめどがただずマットの外に出された。屈伸など体を動かしたり、ジャージーを着たりして、対応。しかし、集中力は途切れた。

 「いつやるんだろう」と結局、再開したのは15分後。1度切れた集中の糸を結び直すことができなかった。開始直後に4失点。その後、タックルが決まりそうな場面も、相手にかわされた。相手は今年のアジア選手権王者とはいえ、世界王者のらしさを出せずに屈した。

 敗れた直後は「集中力を切らせてしまったのは自分の弱さ。最後のツメをしっかりすれば勝てた」とうつむいた。とはいえ「集中力」「最後のツメ」だけでは片付けられないのも事実。前半に体力を消耗させ、後半に勝負を仕掛けるはずが、中断で相手の体力が回復した。アジアの頂点を決める戦いで思い描いた試合プランは、機械のハプニングで崩れた。

 すべての試合を終えた後の取材エリア。最後の方に差しかかると本音を思わず漏れた。「負けて安心した。肩の荷が下りた。これで世界選手権にチャレンジャーとしていける」。そして自分のペースで試合を運べなかった時の対応を課題に挙げた。「こういうこともいずれ生きてくると思う」。このハプニング、そして負けという結果が、今後につながる成長の素になる。