選手からパワハラを告発された日本体操協会の塚原光男副会長(70)と塚原千恵子女子強化本部長(71)が8月31日、声明を発表して徹底抗戦する姿勢を示した。告発したリオデジャネイロ・オリンピック女子代表の宮川紗江選手(18)に謝罪しながらも、発言内容を否定。「進退」にも言及して、戦う決意を強調した。同日、暴力指導で同協会から無期限登録抹消処分を受けた速見佑斗コーチ(34)が東京地裁に指導者としての地位保全を求める仮処分の申し立てを取り下げた。暴力問題収束で、争点は第三者委員会が調査するパワハラ問題に絞られた。

この日午後2時過ぎ、塚原夫妻が連名で「今回の報道につきまして」という声明を出した。A4用紙5枚の4枚目には「今後の私たちの進退については、第三者委員会の結果等も踏まえ、各関係者と協議することも検討する」とある。パワハラが認定された場合は職を辞す可能性も。塚原夫妻の覚悟が感じられた。

声明は関係者や選手への謝罪で始まった。宮川選手にも「私たちの言動で心を深く傷つけてしまったことを申し訳なく思っております」と謝った。しかし、その発言内容については、前日の日刊スポーツ取材と同様に完全否定。1つ1つを例に「事実はない」「真実とは違う」「脅すための発言はしていない」と、争う姿勢をみせた。日本協会による第三者委員会にも協力する意向で「適正にご判断いただきたい」と、静かにファイティングポーズをとった。

宮川選手が「終始高圧的だった」と話したことに「そう思わせたのであれば、大変に申し訳ない」。それでも、第三者委員会に提出予定の録音テープの存在を公表。「決して高圧的な態度でないことはお分かりいただけると思う」と自信たっぷりに明かした。

「大変厳しいご意見をいただいております。すべて私たちの今までの行いに原因があると思っております」「言動の影響力について改めて自覚し、考えを改めたい」と反省した。具体的な記述がない一方で、第三者委員会の場で争う姿勢は鮮明にだした。

塚原夫妻がリリースを出した2時間前、速見コーチが東京地裁への仮処分申し立てを取り下げた。協会が「無期限は永久ではない」としたことを受け「処分を受け入れ反省し、一刻も早く指導復帰を果たすことが選手ファースト」と理由を説明。5日には記者会見もする。処分が確定し、速見コーチと日本協会の争いは決着。今後は塚原夫妻のパワハラ問題が焦点となる。

体操関係者、元選手らも声を上げ始めている。立場が厳しくなっていることは、塚原夫妻がもっとも感じているはずだ。声明を「選手の期待や思いを私たちは1番に考えております」と結んだ同夫妻。第三者委員会で、宮川対塚原の激しいバトルが始まる。