体操女子リオデジャネイロ・オリンピック代表の宮川紗江(18)への暴力行為で、日本体操協会から無期限の登録抹消と味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)での活動禁止処分を受けた、速見佑斗コーチ(34)が5日、都内で会見を開いた。速見氏は、宮川が8月29日の会見で日本体操協会からパワハラ行為があり、塚原千恵子女子強化本部長が女子監督を務める朝日生命体操クラブに加入させられそうになったなどと語った件について、過去3度、朝日生命入りについて話があったことを明らかにした。

最初に、朝日生命体操クラブサイドから引き抜き話があったのは、宮川が中学3年生の秋~冬ごろだという。速見氏は「1度、朝日生命のコーチの方から電話で連絡をいただいて『ちょっとコーチと宮川選手と一緒に来てくれないかという話をしたいので、お食事に行きませんか』とお誘いを受けまして。元々、コーチの方は知り合いで行かせていただいて、その中で『セットで入って欲しいと塚原光男先生から頼まれたので誘ったんだけど』と言われまして」と明かした。その上で「私も当初、どうしていこうかと思い描いていることがたくさんあり、ありがたいですがお断りしますと…それが初めて」と断ったと明かした。

次に声をかけられたのが、17年にカナダ・モントリオールでのことだったという。速見コーチは「直接、宮川選手が言われた訳じゃないですけど、強化本部長の付き人から現地に行った2日目にウォーミングアップの時間帯に言われた」と明かした。宮川は当時、2020年東京五輪特別強化選手にも選ばれておらず、付き人から「今後のオリンピック、海外派遣については分からない。強化本部長が決めるのよ。2020に入って朝日生命にも入ってやれば、すごく良くしてくれるのよ」という感じのことを言われたという。速見氏は「気持ちとして嫌とかじゃなく、ありがたいお言葉なんですけど、そんな簡単に決められることじゃなかったので、その時もお断りさせていただいた」と説明した。

3回目が、今年7月11日から行われた強化合宿中の15日に、宮川が塚原女子強化本部長と塚原副会長に部屋に呼び出された際だという。速見氏は「この前の合宿は私はいなかったので、宮川選手自身が会見で語ったとおり」などと語った。

速見コーチは質疑応答の中で、自らの処分と宮川が主張した朝日生命からの引き抜きとの因果関係について質問を受けた。まず「体協の登録がメールで外れたと通知が来た。宮川選手のコーチとしての登録が外れてしまったので、NTCに関して出入りできないのは当然という認識」、「ハッキリ分かることじゃないし…でも、その7月15日の段階で周りの知り合いのコーチから、暴力問題の話が上がっているとは聞いていましたので、そのことだと思った」と最初は語った。

ただ、さらに質問が続くと「100%そうだとは思っていませんが、そういう可能性も0ではないのかなと少し思いました」と、今回、コーチを外された裏に引き抜きがあったのでは? という思いがあることを認めた。その上で「私はNTCが使えなくなったし、だから海外に派遣しなかったでしょ、と強化本部長に言われたので。(宮川が)2年、海外派遣されていないのは事実」と、圧力があったことを示唆した。

そして「体操界は、いろいろな先生方…40~60代の先生方に『女子の体操は…』と聞かされた部分がたくさんあったので、次は宮川選手なのかなと感じた。引き抜きという認識なのかは、本人じゃないので分からないが、事実として2020に入っていないことの制限と海外派遣されなかった事実はあったので、やはり協会の言うことを聞かないと、そうなるのかなという圧力ですかね、実際に制限がかかったり事実があったので感じていた」とも語った。

塚原強化本部長については「純粋な気持ちで良くしてあげようという気持ちをもっていらっしゃるのは確かだと思います。ただ、それだけの思いを持って言ってくださってるので、こちらのいろいろな思い、計画とかこの先どうやっていけば宮川選手のためになるか、振付師、女性コーチも自分の目でしっかり選択し、頼みたいという思いがあってお断りさせていただくことも多かった。圧力はどうしても感じてしまうとしか捉えられなかった」とも主張した。【村上幸将】