「重量級のホープ」が、コンディション不良でも圧倒的な存在感を示した。五輪王者の故斉藤仁さん(享年54)の次男、斉藤立(たつる、16=東京・国士舘高)が初優勝した。

決勝では8月の高校総体団体戦で敗れた“宿敵”中野寛太(17=奈良・天理高)に残り14秒で得意の内股を決めて優勢勝ち。

「練習してきたことが出来なかった。しっかり組んでから体落としや大外刈りで決めたかった。コンディションも崩して(自己採点は)50点もいかない」

自身の試合内容に納得がいかない様子で、笑顔なくこう振り返った。

数日前の稽古で脱水症状になり39度の高熱を出した。経口補水液「OS-1」を5、6本飲んで、病院で点滴を打った。試合前日にはオムライスの「大盛の大盛」を3杯食べて臨んだが、万全な状態には戻らなかった。「立っているのもつらかったけど、畳の上ではそんな姿は見せられない」と、気合を入れていたが試合中は息が上がっていた。

高2で190センチ、158キロ、足のサイズは34センチの大器。体格は小5で父を超え、いまだ成長途中だ。パワーでは大学生や社会人にも引けを取らない。恵まれた体格に多彩な足技に磨きをかけて、可能性は無限大だ。目標は20年東京五輪金メダルで、11月の講道館杯から負けられない闘いが始まる。

「シニアで勝つことしか考えていない。トップ選手とは天と地ほどの差があるけど、これから埋めていきたい。今は早く帰って寝たい」

試合後は16歳の素顔をのぞかせていた。