20年東京オリンピック(五輪)サーフィン金メダルを目指す五十嵐カノア(20=木下グループ)が、世界の2位になった。世界選手権に相当するワールドゲームズが19日、愛知・田原市のロングビーチで行われ、五十嵐は村上舜(21)とともに男子個人戦グランドファイナル(決勝)に出場。普段転戦するプロツアーとの採点基準の微妙な違いで優勝こそ逃したが、4位の村上とともに日本サーフィン史上初の世界大会メダリストになった。

決勝終了を告げるホーンが鳴っても、五十嵐は5分以上も海からあがらない。両手で激しく水面をたたいて、悔しさを爆発させた。多くのファンとチームメートが待つ砂浜でも、気持ちは収まらない。審判席の下でひざまずき「もっと得点を」とアピールもした。

1本目7・67でトップに立った五十嵐は、3本目も難度の高い連続ターンで高得点を狙った。「7・6くらい出たと思った」が、採点は6・00。「負けることは慣れているし、気にもしない」と言いながらも「いいサーフィンをしたし、100%力は出した。ジャッジが認めてくれなかったのが悔しい」と話した。

五十嵐が日本人として初めて転戦するチャンピオンシップツアー(CT)はワールド・サーフ・リーグ(WSL)の最高峰。しかし、今大会は国際サーフィン協会(ISA)主催で、審判団が違う。WSLの名ジャッジだったウェイド・シャープ日本代表コーチは「WSLなら7・5あった。ジャッジについて、ISAと話す必要はある」と言った。

もちろん、負けは負けだが、五十嵐は「WSLはテクニカルな部分に点を出すけれど、ISAはベーシックなことを求める。今回はいい勉強になった」と前向き。ISAの大会は子どもの時以来。ISAの下で行われる東京五輪に向けて最高の経験を手にした。

日本代表デビュー戦で、日本サーフィンの歴史をつくった。「決勝4人のうち日本人が2人。日本の強さを見せられた」と喜んだ。米国で生まれ育った五十嵐の日本愛。吉永修コーチは「カノアは誰よりも日本や五輪を意識している」という。「いつか日の丸のもとで戦いたいと思っていた。きっかけが、東京五輪だった」という五十嵐は、2位の悔しさを隠して「金メダルはとっておきます」と笑顔で言った。【荻島弘一】