仙台89ERSが福島ファイヤーボンズを79-67で破り、今季初勝利を挙げた。新加入のPG月野雅人主将(29)が司令塔として攻守に存在感を発揮した。同点に追い付いた第3Q(クオーター)途中に3点シュートを決めて差を広げるなど、9得点3アシスト。昨季限りで現役引退した160センチのレジェンド、志村雄彦氏(35=現GM)から「PGで主将」の系譜を受け継いだ月野が、新生仙台をけん引する。

新主将は頼れる男だった。同点に追い付いた第3Q途中。39-39の場面で、月野が華麗なモーションから勝ち越しの3点シュートを沈め、一気に今季初勝利をたぐり寄せた。その後は1度も逆転を許さず福島を圧倒。開幕連敗を阻止し、今季から就任した桶谷大ヘッドコーチ(40)に初勝利をプレゼントした。

月野 昨日は負けたけど、今日は取り返せた。内容としてはこれから。この1勝ですべてが決まるわけではない。これでホッとしていたら、先がない。

主将としてチームを引き締めていた。開幕戦前のロッカールームでは笑いが起こるほど気が緩んでおり、第1Qから見せ場をつくれず完敗。この日の試合前は月野が「特別なことは言ってない。スターターで試合に出る以上、意識を持って準備しないと」と、チームメートにハッパをかけていた。前日とは一転、前半から前に出る積極的なディフェンスを展開。攻撃でもアップテンポにパスをつなぎ、「新生仙台」を思う存分見せつけた。

待望の開幕戦勝利にも手綱を緩めない姿は、昨季限りで引退した志村氏と重なる。主将兼PGとして、強烈なキャプテンシーでチームをまとめてきた。金沢から新加入後、同じPGの月野は志村の背中を追うように新主将に就任した。「僕は志村さんと同じことはできない。求められていることを追求して、自分の色を出していきたい」と意気込む。

今季のスローガンは「GRIND(グラインド)」に設定した。細かく砕くという意味から「コツコツ何かに打ち込む」という意味を持つ。「そこに尽きる。各選手がグラインドし続けることが、ウチのチームの力になる」。仙台伝統の系譜を継ぐ男、月野が先頭に立って体を張り続ける。【高橋洋平】