オリンピック(五輪)2連覇の羽生結弦(23=ANA)が、シニア転向9季目で初めてGP初戦を制した。SP首位で迎えたフリーで190・43点、合計297・12点で圧勝。ルール改正後の世界最高得点を出した前日3日のショートプログラムに続いて、フリー、合計でも世界最高を更新。ワールドレコードを総なめにした。大技の4回転トーループ-3回転半も着氷して、五輪王者としての力を示した。

すべてのジャンプを決めた羽生の声は弾んでいた。「全部立てたということは大きなステップになったのではないかなと思います」。転倒などフリーでジャンプの精彩を欠いた9月のオータムクラシックから5週間。「勝たなきゃ意味ない」と、1つ12点以上を稼ぐ連続ジャンプを後半に3つたたみかける、攻めの構成に変えてきた。

目玉は後半1つ目の4回転トーループ-トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)。世界初となる大技をふらつきながらこらえて着氷すると、大歓声に包まれた。着氷の乱れで0・14点の減点。「自分の中では加点をもらえてこその成功。この試合で終わらせるつもりはないですし、しっかりいいジャンプできるように頑張ります」と次戦ロシア杯を見据えた。

この技を羽生は「自分のできる最高のコンビネーション」と言う。4回転トーループを右足で降りた後に、体をすぐ回転させ、左足で踏み込んでトリプルアクセルへ。このつなぎがあるため得点は2つのジャンプ合計の0・8倍となる。多くの選手が必要とする長い助走がなくとも跳べるからこそ成り立つ大技は「挑戦的で、練習も大変だった」。体力が消耗した後半に跳べるのは、技術が高いことの証しでもある。

史上初への挑戦はまだ続く。羽生はクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を「今季中にやりたい」とあらためて話し、実戦投入は「全日本の後かな」とした。今はプログラムの精度を高めるため、練習量をおさえているが、ジャンプ担当のジスラン・コーチは「よくやっているよ」とニッコリ。着々と準備は進んでいる。

昨年は11月のGPNHK杯で右足首を痛め、そのままぶっつけ本番で五輪へ。GPファイナルの連覇は4で途切れた。初めて自身にとってのGPシリーズ初戦を制し、2季ぶり7度目のファイナル進出へ前進した。世界最高点も記録したが、2週後のGPロシア杯(16日開幕、モスクワ)にはまだ伸びる余地を持ち越した。【高場泉穂】