種目別鉄棒決勝で内村航平(29=リンガーハット)が14・800点で銀メダルを獲得。世界選手権での通算メダル数を21と伸ばし、史上最多23個を手にしている90年代のスター選手で、バルセロナ・オリンピック(五輪)6冠のビタリー・シェルボ(旧ソ連、ベラルーシ)にあと2と迫った。なお、日本勢は最終日に男子跳馬の白井健三(22=日体大)と女子床運動の村上茉愛(22=日体大)もそろって銅メダルを手にしたが、大会全体を通じては07年大会以来11年ぶりに金メダルゼロに終わった。

ラストショーでキングが気を吐いた。銅メダルに終わった団体決勝から5日。日本勢の大トリを飾った内村は、「東京五輪の個人総合の最終種目の鉄棒というぐらい」の集中力で演技を始めた。高さ満点の屈伸コバチから始まり、芸術的なカッシーナ、コールマンなど、難度の高い離れ技を完璧な出来栄えで成功。最後は9月に右足首靱帯(じんたい)を痛めてから初めて、着地をピタリと決めた。

「めっちゃ痛くて、足が取れたかと思ったけど、演技はこれ以上ないくらい良かった。満足している」と言った。もっとも、出来栄えを示すE得点は「エッと思った」と首をひねるほど低い8・4点。「審判に文句を言うわけじゃないけど、今回は日本選手にすごく厳しくつけられている傾向があった」と率直な感想も述べた。

理由は何か。個人総合決勝をスタンドから見ながら考えていると、目の前に力強さと技の正確性を兼ね備えた22歳新王者、アルトゥル・ダラロヤン(ロシア)がいた。「日本は15年世界選手権、16年リオデジャネイロ五輪のチャンピオン。強いから求められるものが大きいが、審判の求めるものをまだ出せていない。ロシアには出せない日本の味を、まだ出せていないのだと思う」。

誇りを持ち続ける一方で、金メダルゼロに終わった現実から顔をそむけず、「東京五輪を見据えると、体操で金がないのは他の競技にも影響が出ると思う」と危機感を口にした。

帰国した後はしばらく休む予定という。「こんなにギリギリの状態で演技したのは初めてだから」。切り替え終えた後に再び頂点を目指していくつもりだ。【矢内由美子】