世界選手権王者で世界ランク1位の桃田賢斗(24=NTT東日本)が2-1で西本拳太(24)を下し、3年ぶり2度目の優勝を飾った。賭博問題による処分が解けて出場した昨年の大会は8強止まり。精神的に成長した今大会はその悔しさをバネに頂点を勝ち取り、12日に開幕するワールドツアーファイナル(中国・広州)に弾みをつけた。女子シングルスは山口茜(21)が奥原希望(23)に2-1で勝利し、2年連続3度目の優勝を果たした。

世界ランク1位は第3ゲームに入っても動じなかった。桃田は序盤に「相手の動きが見えていた」と西本のスマッシュを好レシーブ。「勝ち急いでいた」第2ゲームの課題を修正し、我慢の試合運びで点差を広げた。

優勝の瞬間、ガッツポーズをして、いつものように観客に一礼した。賭博問題の処分が解け、2年ぶりに出場した昨年は力を出し切れず8強止まり。周囲を気にし、ガッツポーズができなかった。それから1年。日本代表に復帰、伸び伸びとプレーできるようになり、国際大会での好結果にもつながった。大会前に所属するNTT東日本の須賀監督に「今年は気持ちが楽です」と打ち明けた。

世界のトップに立っても慢心はない。今年は半分以上が海外遠征。しかもほとんどの大会で勝ち上がるため、帰国時はいつもクタクタ。休むよう促されても翌日のチーム練習には必ず顔を出した。11月19日に帰国し、今大会までの間もチームの後輩の練習に付き合い、アドバイスも送った。

見えない心がけも続ける。会場では乱れたスリッパを並べ、ゴミを見つけたら拾って持ち帰る。「やったからといって何かが起きるわけではないですけど、徳を積むというか…」。この日もコートの脇にラケットをそろえて並べ、気持ちを整えて試合に臨んだ。

来週には実業団で争うS/Jリーグ開幕戦に参戦し、12日からは中国でのワールドツアーファイナルが待ち受ける。来年5月からは代表をかけた「オリンピックレース」も始まる。実力に精神力が備わった桃田は、休むことなく金メダルまで走り続ける。【松熊洋介】