スポーツクライミング18年ワールドカップ(W杯)ボルダリング年間女王の野中生萌(21=TEAM au)が、東京都内初のスピード壁を完成させた。

16日、野中がクラウドファンディングで資金を集めて建設したスピード壁が、豊島区の立大池袋キャンパスでお披露目された。真新しいホールド(突起物)の感触を確かめた野中は「壁もホールドも新しくて、そそられますね」と自分専用壁を前に笑顔をみせた。

スピードでは日本女子最速の8秒57のタイムを持つ。「練習では8秒4も出ているので、練習を積んで7秒台を目指したい」と目標を掲げた。

20年東京オリンピック(五輪)のスポーツクライミング競技はスピード、ボルダリング、リードの3種目複合で争われる。スピードの実力もメダルに大きく影響するが、これまで日本にはスピードの練習環境がほとんどなく、まずは壁を作ることが急務とされてきた。

複合の得点は各種目の順位のかけ算で計算され、複合でメダル争いをする選手はボルダリングやリードの得意な選手が多いのが現状。スピードで1位を取れるとかけ算にも非常に有利となるため「練習すればするほどタイムは速くなるし、力を入れなければいけないところ。複合の決勝にも8人進めるルールに変わったので、1位の価値もさらに上がる」と位置づけている。

都内では昭島市に17年4月にスピード壁ができたものの、都心から遠いこともあり「なかなか練習時間が取れなかった」。東京五輪の方式が複合に決まった2年以上前から、野中はどこかスピード壁を作れる場所がないか探し、立大の敷地内に目をつけた。

今年5月には豊島区、立大と話し合い建設が決定。9月にはクラウドファンディングで資金を募り、1カ月間で目標額の250万円を大きく上回る472万1700円が集まった。

クラウドファンディングでの資金に加え、野中の個人負担で壁の建設費を捻出したという。「たくさんサポートしていただいてびっくりですし、ありがたい限りです」。

野中の自宅からは自転車で15分ほどの距離のため「練習をどんどんやっていきたい。ボルダリング、リードの練習を減らすのではなく、スピードの練習を増やす形」と練習にも熱が入る。このスピード壁は野中の使用に限る運用とし、一般や学生への開放は予定していないという。