男子ショートプログラム(SP)2位の高橋大輔(32=関大KFSC)がフリー4位の151・10点を記録し、合計239・62点で2位に入った。今夏、4年ぶりの現役復帰を表明。世界選手権(19年3月、さいたま)代表に選出されたが、辞退を決断した。目標は今大会に置いてきたが、現役引退は考えておらず「スッキリして終わりたい」と発言。同選手権には3連覇した宇野昌磨(トヨタ自動車)、3位田中刑事(倉敷芸術科学大大学院)、右足首故障で欠場した羽生結弦(ANA)が選ばれた。

高橋が5大会ぶりの全日本選手権で立った表彰台は、少し居心地が悪かった。「2番でびっくりしたし、違和感があった」。復帰1シーズン目で、日本連盟は世界選手権選出を決定。だが、高橋自ら「世界と戦う覚悟が持ちきれていない」と辞退を申し入れた。自分の口で理由を報道陣にきっちりと説明し、当面の目標だった今大会後のビジョンも「僕だけの判断ではできない」としながら言った。

「できるなら(現役を)続けていきたい。(選手)登録を抹消するつもりはないし、休養もありません。今日の演技がすごく悔しかった。『スッキリ終わりたいな』ということです」

7月に4年ぶりの現役復帰を表明し、今大会でのフリー最終組入りをモチベーションにしてきた。SP2位で目標を果たし臨んだフリー。冒頭、予選2大会で組み込まなかった4回転トーループに挑み、3回転となった。3連続ジャンプでは最後の3回転サルコーで転倒。その悔しさがありながら、演技構成点は5項目中2項目で10点満点の9点台を記録した。「エナジー的には3大会の中でショート(SP)、フリーとも一番だった」と燃えることができたのも、事実だった。

やれることはやった。スピン3つは2種類がレベル3、1種類が最高のレベル4。取りこぼしたように見えるが、当初からここが限界点だった。今季の演技構成は「チェンジフット・キャメル・スピン(足を替えて上半身と片足を水平にする)」と「チェンジフット・コンビネーション・スピン(足替えの組み合わせ)」で、あえてレベル3に照準を合わせた。4シーズンのブランクで古傷の右膝も痛み、他の部位にも反動はみられた。短い準備期間を考慮した上で、高橋自身が「レベル4でぐらつくなら、(基礎点の低い)レベル3で加点を」と決断。裏を返せば、伸びしろを残す。

世界選手権代表となれば、2月の国際大会で一定の技術点を突破し「ミニマムポイント」を獲得することが条件だった。心の準備不足を明かした上で「行きたい気持ちはやまやま。でも、練習もギリギリだった。若い選手が(世界の)舞台を経験することの必要性も大きい」。勢いに身を任せず、32歳は冷静に最善の策を選んだ。【松本航】

◆高橋大輔(たかはし・だいすけ)1986年(昭61)3月16日、岡山県生まれ。8歳から競技を始める。02年世界ジュニア選手権を制し、06年トリノオリンピック(五輪)8位。10年バンクーバー五輪で銅メダル、世界選手権優勝。14年ソチ五輪で6位となり、同年10月に引退。引退後はプロスケーター、解説などで活躍。165センチ。