14日にテニスの今季4大大会初戦、全豪オープン(メルボルン)が開幕する。日本の男女のエースは、世界9位の錦織圭(29=日清食品)が、前哨戦のブリスベン国際で約3年ぶりのツアー優勝。自身初めて、今季無敗で全豪に挑む。世界5位の大坂なおみ(21=日清食品)は、昨年の全米を制して以来、初の4大大会挑戦だ。同じハードコートの全豪で全米の再現を狙う。


全豪オープンへ準備する錦織
全豪オープンへ準備する錦織

錦織は悲願のマスターズ大会、4大大会の優勝、大坂は2度目の4大大会制覇が今季の最大の目標となる。そのためにも、両者は立ちふさがる強豪を倒さなくてはならない。全豪、そして今季開幕に当たり、「4大大会制覇のために、錦織圭、大坂なおみが倒すべき5人の強豪」、「中尾公一前トレーナーが明かす錦織圭」を3回に分けてお届けする。第1回は、「4大大会制覇のために、錦織圭が倒すべき5人の強豪」だ。


錦織にとっては最大の壁だ。「どうやって攻めていいか分からない」と言う、ただ1人の選手かもしれない。なのに、非常に多くの対戦機会が訪れる。実際に対戦したのは17回。これ以外にも2回、対戦の機会があったが、試合前に錦織がケガで棄権している。19回の対戦機会は、錦織の対戦相手として最多だろう。つまりジョコビッチを倒さなければ、錦織の4大大会制覇はないと言っていい。この全豪も順当に行けば準々決勝で対戦が予想される。ストロークを中心として組み立てる似たタイプ。ただ、安定性ではジョコビッチの方が数段上。錦織も「どんなに攻めても穴がない」と言う。最近身につけたネットプレーを織り交ぜ、ジョコビッチの穴をこじ開ける攻撃を仕掛けたい。


初対戦だった08年のウィンブルドン前哨戦。ナダルは、当時、まだ100位以下だった錦織を「必ずトップ10に入ってくる逸材」と見抜いていた。錦織は、過去12度対戦し、2度しか勝っていないが、ジョコビッチほど苦にしていない。「やり方は、ある程度、分かっている」と話す。サーブとバックが、フォアに比較して弱点と言われており、錦織にとって、そこが突きどころなのだろう。2度の勝利は、徹底的なバック攻めで手に入れた。ナダル戦と言えば、14年マドリードオープン決勝とリオ五輪3決だ。マドリードは完全に勝ちかけたが、途中ケガで失速から棄権。勝っていれば、マスターズのタイトルだった。リオ3決では勝ち、日本テニス界に96年ぶりにメダルをもたらした。


錦織が最もあこがれる選手がフェデラーだ。マイケル・チャンが、コーチになる前に、錦織が「フェデラーがあこがれ」とチャンに話したら、「あこがれでも、ネットの向こうでは敵」と叱咤(しった)された。それが効いたのか、トップ3の中では、最も対戦成績がいい。10度戦って3勝7敗。最近では、18年ATPファイナルの初戦での勝利が記憶に新しい。フェデラーが片手のバックである弱点を、錦織は利用する。早めのテンポで振り回し、バックをスライスで打たせる。それか、肩口より高く弾むスピン球をバックに送り、力が入らない返球を打たせる。これがはまったときは、かなりの確率で競る。また、今はネットプレーがあるため、フェデラーに圧力をかけることもできる。


倒すべき5人の中で、ただ1人、錦織より年下なのがA・ズベレフだ。13年ジュニア世界1位の逸材で、通常18歳のところ、16歳でジュニアを卒業した早熟の21歳だ。若さと身長198センチの体格から、パワフルに打ち込むプレーは、錦織にとっても脅威だ。対戦回数は、ズベレフが若手だけに3度と少ない。錦織が1勝2敗と負け越しているが、18年4月のモンテカルロマスターズでは、得意の赤土で、錦織に軍配が上がった。ズベレフは、若さゆえか、精神的にまだムラがある。3度のマスターズ大会、18年末のATPファイナルの優勝があるが、4大大会は18年全仏のベスト8が最高成績だ。錦織は、今の内にたたいて、強さを印象づけておきたい。


デルポトロは、18年10月にマスターズ上海大会で左ひざを骨折。復帰に向けてリハビリを行っており、回復具合は順調だという。しかし、14日開幕の19年全豪には間に合わず、残念ながら欠場となった。しかし、左右の手首を合計4回手術。14、15年の大半を棒に振りながら、不屈の闘志で復帰して自己最高の3位になった直後の不運だった。錦織も、同じくけがが多いため、彼の復帰には喜びを見せていた。1歳違いで、ジュニア時代から対戦がある。08年全米で錦織が初めて4大大会4回戦に進んだとき、8強入りを止められたのがデルポトロだ。一般では過去8度対戦し、錦織から2勝6敗。フォアの強打に比べ、バックがやや弱いため、どれだけ大事な場面でバックを打たせるかが鍵だ。


◆WOWOW放送 全豪オープン。1月14~27日。連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。