延長戦68-69、残り2・6秒。富樫勇樹(25)が放った3点シュートは、リングに吸い込まれた。この日1本も3点シュートが決まっていない中で、大野監督とチームは富樫に最後を託した。「空いたら打つ、シンプルにそれだけ」。値千金の大逆転シュートに、チームメートにもみくちゃにされ、主将の小野と抱擁を交わした。「今後の人生でこんな勝ち方ないんじゃないかな」と大興奮で勝利の余韻に浸った。

これまで1つのミスから大崩れしていた千葉が、今季は粘り強さを身につけた。富樫も「終始栃木ペースの中、勝ち切れたことにチームの成長を感じる」。ファイナルラウンド準決勝のA東京戦は残り0・5秒で逆転勝ちした。進化の要因は守備にある。「攻撃のチームと言われ続けてきたけれど、攻撃を伸ばすより守備の改善じゃないか、と。守備への意識がチームに浸透してきた」と大野監督。小野も「水もののシュートではなく、守備で我慢できるか。いい守備をして、走った結果」とチームの成長も実感した。

あきらめたやつは勝てない-。指揮官が日々呼びかけた言葉が結実した。次の目標はクラブ創設初のリーグ優勝。「この勢いをリーグに」。天皇杯をステップに、新タイトルに向けて走り続ける。【戸田月菜】