連覇がかかっていた世界ランク3位の張本智和(15=エリートアカデミー)が準決勝で姿を消した。世界ランク33位の大島祐哉(24=木下グループ)にフルセットの末、敗れた。

最終ゲーム。9-9で大島のサーブがネットにかかり、やり直し。普段だったら何でもない場面に、会場はどよめき、異様な空気に包まれた。再サーブ、「チキータで行くかどうするか迷っている最中に来てしまった」と、これまでの向かっていく姿勢とは別人の張本がそこにはいた。失点し、9-10。「その時点で次何をやってもダメだったと思う」と振り返った。

試合後、コーチの父宇さんに肩をたたかれ、ベンチに座り込んだ。ぼうぜんと前を見つめ、動かなかった。その時を振り返り「負けたことを受け入れたくなかった。負けを考えると悔しい。だから、何も考えないで座っていた」。現実を受け入れたくなかった。

昨年は全日本選手権で初優勝し、12月のワールドツアー・グランドファイナルでも初優勝。完全に追われる立場となり、「自分で考える以上にプレッシャーがあった。厳しい全日本になってしまった」と語った。準決勝でも9歳上の大島の方がチャレンジャーの姿勢を前面に出し、受け身で試合を運んでしまった。

前日、既に水谷との決勝を意識し「昨年の優勝は勢い。でも今は、自分の方が実力は上」とも話していた。グランドファイナル後も「ずっと勝っていくつもりで19年を戦いたい。世界ランク1位を目指したい」と語っていた。自分に言い聞かせるように高い目標を掲げ、日本卓球界を引っ張る姿勢を見せていたが、それが知らないうちに、大きなプレッシャーになっていた。

年末年始、つかの間の休息を地元仙台で過ごした。小学時代の友人と年末に食事に行き、たわいもない会話で盛り上がった。年始には彼らと人生初めてのボウリングに行った。初スコアは「69」と低調だったが、友人と過ごした時間が楽しかった。しかし、休息はこの時間だけ。大みそかも元日も卓球台に向かった。それだけ全日本連覇に懸ける思いが強かった。

試合後、張本の目には涙が見えたが、その表情は新たな決意に満ちていた。「全日本で負けてしまったが、世界ランクには関係ない。3月の(ワールドツアー)カタールオープンに向け死ぬ気で練習する」。来年の東京オリンピック(五輪)で金メダルを目指す15歳は、この敗戦を糧にする。