全日本柔道連盟の山下泰裕会長(61)が、4日に現役引退を発表した「野獣」こと12年ロンドン・オリンピック(五輪)女子57キロ級金メダルの松本薫(31=ベネシード)にねぎらいの言葉を贈った。

7日、グランドスラム(GS)パリ大会(9、10日)を視察するため羽田空港を出発。搭乗前に取材に応じた山下氏は、松本について「本当によく頑張ってくれた。お疲れさまだね」とねぎらい「ロンドン五輪では日本選手唯一の金メダルで、あの鋭い眼光でグッと前に出る気迫と自信に満ちた戦いは印象に残っている」と思い返した。

松本は闘志むき出しの柔道スタイルから「野獣」の異名を取り、老若男女から親しまれた。銅メダルだった16年リオデジャネイロ五輪後に結婚。17年6月に第1子の長女を出産後に復帰した。「ママでも金メダル」と宣言し、20年東京五輪を目指していた。山下氏は「畳上では命懸けで臨む姿を体現し、『野獣』という表現は当たっていると思う。19年世界選手権、東京五輪の日本代表も松本選手のように野獣になって、相手をのみ込むぐらいの勢いで向かってほしい」と、次世代への野獣継承を願った。

柔道界では、親の影響で競技を始める選手も多く、“野獣ジュニア”の活躍も期待される。「(松本が)また柔道に携われば、(娘さんも)おのずとスタートするかもしれない。ただ、うちもそうだけど、五輪金メダリストのお子さんはすごくプレッシャーがある。柔道を始めたとしても、伸び伸びやってほしいね」と理解を求めた。

「世界のヤマシタ」も松本の未知なる可能性を感じている。柔道界に限らず「さまざまな経験を次世代に伝えてほしい。柔道に関わるのであればもちろん応援したい」と、第2の人生のさらなる活躍を期待した。【峯岸佑樹】