初出場初優勝を目指す紀平梨花(16=関大KFSC)が68・85点を記録し、5位発進した。冒頭は「スピードが足りなかった」と代名詞のトリプルアクセル(3回転半)に挑んだが、1回転半となり、規定により0点。それでもフリップ-トーループの連続3回転、3回転ルッツは加点を導くジャンプで立て直し「焦らずにできた」と振り返った。

試練に立ち向かった。SP2日前の公式練習(5日)で3回転ルッツを転倒。左手薬指を氷のくぼみにとられ、翌6日に第2関節の亜脱臼と判明した。スケーターにとって指は、ジャンプ時に拳を作り、体を締めて跳び上がるための重要部位。スピンなどにも影響があるが、笑顔を貫いた。

演技前には浜田美栄コーチから「真のチャンピオンになるにはこういう試練も必要だし、挑戦だと思って頑張って」と送り出された。8日のフリーへ「今日、トリプルアクセルをミスしておいたから、フリーでは『こういうことがあってはいけない』というのも分かったと思う。そこをしっかりと生かして(フリーは)決められるように頑張りたい」と力強く言い切った。

18年12月のグランプリ(GP)ファイナルでは初出場初優勝。シニア1年目は国際大会負けなしで、3月には今季最大の舞台、世界選手権(さいたま市)を控える。

まだ16歳の高1だが、その背中に憧れる者は多い。1月15日の西宮市役所訪問では、自らが卒園した広田幼稚園(同市)の園児16人から玄関先で出迎えられた場面があった。同園によると年長の76人が「行きたい! 行きたい!」と手を挙げ、最終的にはくじを引くことになったという。上田尚子園長(38)は「子どもたちももちろん、紀平さんのことをよく知っています。先輩というより『園のお友達』という風に見ているようです」。世界を舞台に戦う姿は、次の世代に夢も与えている。

首位のテネル(米国)とは5・06点差。後悔のない演技で、上を目指す。