1月のボルダリング・ジャパンカップで初優勝した野中生萌(みほう、21=XFLAG)が、日本初開催となったスピード種目の大会も優勝した。ボルダリングに続く国内2冠に輝き、3種目の複合で行われる20年東京オリンピック(五輪)に向けて自信をつかんだ。男子はスピードを専門とする池田雄大(21=千葉県連盟)が栄冠を手にした。

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気温6度の寒空の下で、野中は力強く頂点に登り詰めた。予選タイムの上位16人による1対1のトーナメント形式で行われた大会の決勝は、伊藤ふたばが相手。普段は片手でつかむホールド(突起物)を両手でつかんでしまうミスで序盤は伊藤にリードを許すも、持ち前のパワーで加速し、振り切った。

「初めての国内大会で、特別感のある優勝」。自身の持つ日本女子最速の8秒57の記録には届かなかったが、9秒388を記録。「カイロを6個使った」と言うほどの寒さに耐え、タンクトップ姿で駆け上った。

野中のパワフルなスタイルはスピード種目でも生きている。女子選手でも群を抜いて筋肉質なのが特長で、スピードも男子選手と同じ登り方ができる。男子の楢崎智亜が考えた、序盤の左位置のホールドを1つ飛ばして直線的に登る「智亜スキップ」と呼ばれる登り方も、昨年11月のアジア選手権で初めて実践。「筋力と瞬発力が重要ですね」と現在も女子では唯一使い、力の差も結果に表れた。

東京五輪が複合方式に決まり、経験のないスピードも必須となったことで17年秋から本格的に練習を始めた。日本はスピードになじみがなく、壁が少ないため練習もできなかった。野中はクラウドファンディングで資金を募り、昨年12月に東京・豊島区の立大に私用の練習壁を完成。自宅から自転車で15分ほどで、同年末には「1週間がっつり通って練習した」。これまで月1~2度程度だった練習も数を積めるようになり、今回結果にも結びついた。

3月には苦手とするリードの大会も控え「やっかいですが、しっかりとやりたい」。東京五輪に向け、まだまだ登り続ける。【戸田月菜】

◆スピード種目 全世界共通の傾斜、ホールド配置の高さ15メートルの壁を登るタイムを競う。予選でフライングをすると、その時点で予選敗退。決勝は16人の勝ち抜き戦のタイムレース。世界記録は男子5秒48、女子7秒32。

◆スピードの第一人者・池田が、藤井との決勝を制して優勝した。千葉・長生高で競技に出会い、順大3年在学中。印西市から昭島市のスピード壁に2時間かけて通って練習を積む。あくまで目標は日本協会も代表選考基準タイムとする「6秒20を切りたい」。複合で行われる20年東京五輪は「自分は戦うレベルにない」と狙わず、「24年パリ五輪で単種目となれば間に合うかな」と先を見据えた。