男子シングルで主要国際大会初優勝を果たした宇野昌磨(21=トヨタ自動車)が「脱エンジョイ」で世界一を目指す。

フリーから一夜明け、エキシビションに出演。前日のフリー後、目標を優勝に設定した世界選手権(3月20日開幕、さいたまスーパーアリーナ)へ「楽しい気持ちは今年は持たない」と勝負師の姿へ変貌する。

フリー世界最高得点での逆転劇から、約12時間。前夜、日付が変わる間近まで記者会見に出席していた宇野に「ドーピング(検査)が終わったら(午前)1時過ぎ。寝て、そのまま来た感じなので『本当に忙しいな』ということしか…」と初優勝の余韻は皆無だった。疲れの残った表情を見せつつ再度、3月の世界選手権へと目を向けた。

「ジャンプを全部成功させるっていうのは、やはり条件になる。優勝するにあたって『失敗しない』っていうところが、何より大切なところだと思う」

1年前の平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)を制した羽生、昨季世界王者のチェン(米国)らが集う今季最大の舞台。これまで順位にこだわらなかった男は「自分で優勝したいという思いが強く出たからこそ、発言した」と心境の変化を説明した。

では、どう勝つのか。その話題に口調は強まった。

「『楽しい』という気持ちを、今年は持たないようにしている」

現在は世界ランク1位も、今大会までは主要国際大会6連続2位ともがいた。「楽しむと緊張もしないし、いい方向に向きやすい。でも『楽しむ』って挑戦する側だからこそできる。いつまでも追いかけているだけじゃなく、追われるっていうのを考えつつ、『やるぞ』というところで『やる』選手になりたい」。21歳の変化と自覚がにじんだ。

残りの約1カ月は故障後の右足首に気を配りながら、今大会回避した4回転サルコーの練習も積む予定。「世界選手権では少しのミスも、大きな結果の違いに出る」。2年連続2位からの脱却へ、腹は固まった。【アナハイム(米カリフォルニア州)=松本航】