女子決勝は、秋田・八郎潟町出身で再春館製薬所の志田千陽(ちはる、21)が、2季ぶり2度目の優勝を導いた。日本ユニシス相手に1-1で迎えた第2ダブルスに松山奈未(20)とのペアで登場し、2-0のストレート勝ち。青森山田の先輩でもあり、今季限りの引退を表明していた12年ロンドン五輪女子ダブルス銀メダリスト藤井瑞希(30)、垣岩令佳(29)の最終戦で、金メダルの花道を送った。

 

   ◇   ◇   ◇   

 

志田が強烈なスマッシュで優勝を決めた。相手レシーブがネットにかかって優勝決定。ガッツポーズする「シダマツ」ペアのもとに、「フジカキ」ら仲間が駆け寄り、歓喜の輪。勝てば優勝だが、敗北と背中合わせの緊張感ある重責を果たし、笑顔と涙。抱擁にハイタッチ。「長いラリーや、きつい場面もあったが、ベンチにいる藤井さんや垣岩さんが近くで見てくれていることが力を引き出してくれました。パワーにつながった」。藤井らを胴上げし、感謝した。

志田・松山組は、プレーオフを含めて今季6戦全勝。世界ランク上位を、次々に撃破してきた。昨年4月、世界でも活躍するエースダブルス「フクヒロ」ペアの福島由紀(25)、広田彩花(24)が岐阜トリッキーパンダースに移籍。突然、エースに“昇格”せざるを得ない緊急事態だった。志田は「荷が重すぎた。松山もちょうどケガをしていた時期で…。正直、憂鬱(ゆううつ)で逃げ出したくて」と当時を振り返る。

集中力を欠いた同5月の練習中、強い口調でカツを入れて目覚めさせてくれたのが藤井だった。「『今、やるべきことがあるでしょ』って、かなり怖かったけれど、それがきっかけでした」。エースダブルスとしての自覚、周囲を盛り上げる練習態度、技術の向上心。すべて教授された。背中を見て成長を続けた。

垣岩はケガで欠場したが、第1ダブルスで敗れた藤井の奮闘に報い、しっかり勝ちきった。「藤井さんは絆の強さを感じさせてくれる方。メダリストだからじゃなく、人間性が認められているから愛される」。若手の成長を2人からたたえられると「優勝できて恩返しになったかなと思います」。五輪出場、メダル獲得への背中も追う、第1歩となった。【鎌田直秀】