東京オリンピック(五輪)に向けて代表争いがスタートした。五輪代表へ第1関門となる強化候補選手入りを目指し、国内大会では初めて「五輪方式」を採用。

予選7位の中山楓奈(ふうな、13=ムラサキ高岡)が、一発勝負の「ベストトリック」で逆転し、17・5点で2位に飛び込んだ。優勝は藤沢虹々可(ななか、17=ACT SB)で17・9点、3位には16・8点で織田夢海(ゆめか、12=ムラサキ名古屋茶屋)が入った。

逆転を狙った5本目、13歳の中山はレールに向かってスピードに乗った。前足のかかとでボードを縦に回転させ、そのままレールに乗って滑る。「ヒールフリップ・フロントサイド・ボードスライド」。2位の織田を逆転し、トップ藤沢に迫る5・0の高得点。男子でも難しい技が決まり、パークが興奮に包まれた。

東京五輪を見据えた新方式。45秒の「ラン」2本と一発勝負の「ベストトリック」5本を行い、計7本の上位4本の合計点で争う。「ランもベストトリックも比重は同じ。見ていて楽しく、興奮できるのが、五輪に向けた流れ。点の出るトリックを持っている選手が有利です」とジャッジの冨田誠競技委員は話す。

中山は「五輪方式」を見事に利用した。「ベストトリックは好き。難しい技に挑戦するのは楽しい。最後も逆転を狙いました」。ベストトリックも3、4本目はミスで0点。5本目が決まったことで、最後の大技で失敗したランの2・7点が消えた。日本代表の早川大輔コーチは「まだ出していないトリックもある。誰もやらないことができるのが武器。楓奈は五輪方式に合っている」と解説した。

普段は富山市内のパークで練習するが、今年に入ってからは毎週末、この日の会場ムラサキパークに通った。往復夜行バス、東京に早朝着くと午後1時の営業開始まで漫画喫茶で仮眠と勉強。夜まで滑って再び夜行バスに飛び乗る。最初は同行した父洋志さん(42)は「お金もかかるので、僕は富山のバス停まで車で送るだけ」と笑った。

昨年は強化選手選考会3位で2位までの世界選手権出場を逃した。今年こそ5月の日本選手権との総合成績で上位に入り、上位を目指したい。全校生徒40人ほどの富山市の「山ばかりの町」(洋志さん)にある山田中に通う13歳は「東京五輪は分からないけれど、日本選手権では1位になりたい」と目を輝かせた。【荻島弘一】

◆中山楓奈(なかやま・ふうな)2005年(平17)6月17日、富山市生まれ。富山市立山田小3年の5月に市内にできたスケートパークで体験し、直後の誕生日にスケートボードをプレゼントされて本格的に始めた。昨年、山田中入学直後の日本選手権3位で強化候補選手入り、初の海外遠征となった9月のアジア選手権で3位に入った。