高らかに復活を宣言した。20日に開幕するフィギュアスケートの世界選手権は19日、さいたまスーパーアリーナで公式練習が行われ、右足首の故障明けで約4カ月ぶりの実戦となる冬季オリンピック(五輪)2連覇の羽生結弦(24=ANA)が初練習した。午前と午後で計24本の4回転ジャンプを着氷。記者会見では21日のショートプログラム(SP)に向け「100パーセントと言える状態」と2年ぶりの世界一を見据えた。

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正午。銀盤に入った羽生は、祈るように目をつぶった。それから他の4選手に遅れて、ゆっくりとスケーティング。3番目に名前がアナウンスされると、両手を広げて3221人の観客の声援に応えた。上着を脱ぐと、一気にスピードを上げ、この日最初のジャンプで3回転ループ、続いてトリプルアクセル(3回転半)も着氷させると、会場の雰囲気は一気に高まった。

その後も勢いは止まらない。4回転-3回転の連続トーループを決めると、その後は右足首負傷の原因となった4回転ループも鮮やかに着氷した。4回転サルコーも含め3種類の4回転ジャンプをそろえた。午後練習でも3種類の4回転ジャンプに成功。合計でループ4本、サルコー8本、トーループ12本の4回転を決め、復活を印象づけた。

会見では自信に満ちあふれていた。この日の練習での感触は「全てミッションコンプリート(任務完了)。感覚良く滑れた」。右足首の状態について「完治ではないけれど、試合に出られる状態に戻すようにやってきた。胸を張って100%と言える状態」と復調をアピールした。

21日のSPは、昨年11月のグランプリ(GP)シリーズロシア杯フリー以来124日ぶりの公式戦。長期ブランクは18年平昌五輪と重なる。その時はシーズン当初4種類だった4回転を2種類に絞って五輪本番に臨み連覇した。今回は平昌五輪よりもブランクが長く、4回転ループも3週間前に50本跳んでようやく1回成功したばかりだが「五輪の時と違ってループを跳ばないといけない使命感があった」。負傷前と同じSPで2度、フリーでループを含む4度の計3種類6度の4回転を跳ぶ予定だ。

負傷を抱えながら優勝したロシア杯で燃え尽きかけたが、再び闘志に火が付いた。「試合に出られない時期はつらく『油はあるし、火もあるけど、小さな部屋の中で燃えている状態』。今は『大きな箱の中で光って暴れ回る炎』になれている」と独特の表現で心境を語った。14年世界選手権を初優勝した思い出の会場で、王者奪還に挑む。【佐々木隆史】