オリンピック(五輪)前年とは思えないほど、大会を通してムードは暗かった。瀬戸や渡辺、大橋らは記録が今ひとつでも世界選手権に照準を合わせているから心配はない。それぞれ課題はあるが、ラップタイムには夏への意図を感じることができる。

ただ、代表を狙うレベルの選手は低調だった。思うようにタイムが伸びず、派遣記録突破者もわずか。五輪前には一気にトップに駆け上がる選手が出てくるものだが、それもなかった。泳ぎが重かったり、後半に失速したり。普段通りでない選手も少なくなかった。

五輪前年だからこその理由がある。調整の失敗だ。各チームともに例年、日本選手権を目指してコンディショニングをする。五輪代表選考会の来年は冒険できない。試行錯誤ができる今年は、高地トレの場所や時期、直前練習の強度などテストできる最後のチャンスだった。来年を意識して試したことが裏目にでた。

今大会の低調ぶりは、タイムを見れば明らか。もちろん、トップ選手の不在や大会全体の流れもある。ただ、メンタルを理由にしていては、その先はない。今大会を検証して調整法を見直すこと。それができれば失敗はポジティブなものになる。(日刊スポーツ評論家)