上野の右腕が、東京五輪の幕開けを告げる。日本代表の宇津木麗華監督(55)は16日、全競技のトップを切って福島で行われる20年7月22日の開幕戦の先発に、上野由岐子投手(36)の起用を示唆。08年北京大会で日本を金メダルに導いたエースが、12年ぶりの五輪舞台で「日本選手団」を勢いに乗せる。

「世界に対してアピールができる。最高のプレーをしたい」と、宇津木監督は初戦の重要性を強調した。他の競技に先駆ける開幕戦には競合する競技もなく、世界の目が集まる。競技をアピールするチャンスに、エースは外せない。

開幕日は、上野の38回目の誕生日。「この前、上野とその話をした。プレゼントはあげられないけれど先発させることはできる、と言いました」と、先発を口にして上野の闘志を刺激したことを明かした。上野が投げればチームの士気も高まり、日本中が五輪ムードに包まれるのは確実だ。

上野への信頼の厚さは変わらない。「世界選手権でも、誕生日に素晴らしいピッチングをした」と宇津木監督。12年のカナダ大会、7月22日の敗者復活戦と決勝で上野を連投させた。決勝で米国を下し、42年ぶりの世界選手権制覇。その快投の再現を期待する。

出場6チーム中決定済みは日本と米国だけ。日程は決まっていないが、組織委は日本を第1試合にすることで調整中だ。36歳で日本の大黒柱に君臨し続ける上野は「自分はまだ進化している。出るだけでは意味がない。出たら勝つ」。東京五輪は上野で始まる。