◆体操全日本個人総合選手権<展望・見どころ>


【男子】五輪2大会連続個人総合金メダリストの内村航平(30=リンガーハット)の復権はなるか。それとも、若手の台頭が続くか。東京五輪への試金石となる今秋の世界選手権(ドイツ)代表争いの第1関門が26日に幕を開ける。


会見で苦境と決意を語る内村
会見で苦境と決意を語る内村

内村航平 奪還狙う「キング」


内村はここ2季は苦しい時期を過ごしてきた。加齢による身体変化を肌で感じながら、重なる故障に結果を奪われてきた。17年世界選手権では、個人総合の跳馬の着地で負傷し途中棄権。連覇記録が6で止まった。さらに18年も受難が続いた。個人総合の全日本選手権で3位に終わり、11連覇ならず。世界選手権では大会直前の故障で個人総合の出場すらかなわなかった。


迎える19年シーズン。初戦を前にして、その受難が終わっていない事を明かした。「肩を痛めてしまって、右、左肩も何ですけど。その痛みを引きずりながら今大会を迎えている状況で、最低限の準備はしてきてなんとか試合はできるかな」。前日会見で明かしたのは、またも体へのダメージだった。昨年大会に比べてもゆか以外の難度を下げるプランだという。優勝という言葉は口にせず、「なるべく小さいミスも出さずにいって、しっかり(世界選手権の)代表に入りたい。代表に入ることが最優先」と話すに留めた。


体操全日本個人総合選手権の有力選手
体操全日本個人総合選手権の有力選手

手負いの「キング」の復権を阻むとすれば誰か。


谷川翔 若き昨年覇者


昨年大会で連覇を止めたのは、当時19歳の谷川翔(20=順大)だった。ほぼノーマークの立場から、一気に頂点を極めた超新星は、しかしその後に不本意なシーズンを送った。世界選手権代表は補欠で、調子が上がらない現実にもがいた。今回も周囲に2連覇という言葉を聞けば、昨年の優勝を思い返すくらい、王者としての意識は薄い。「考えすぎると硬くなりそう。あまり考えないで去年くらいの楽な、去年は自分でも自分に何も期待してなかったし、気楽にいけたらいいのかな」と過度な重圧は背負わずに挑む。D難度は6種目合計で0・6上げてきている。


白井健三 オールラウンダーへの飛躍


スペシャリストからオールラウンダーへの飛躍を続ける「ひねり王子」白井健三(22=日体大大学院)は、「けが人が普通の体操選手になって戻ってきた」ととびきり表情が明るい。4月7日の東京でのW杯は足首の負傷を抱えての強行出場だった。難度を落として6種目をやり切った反動も少なく、むしろやり切れた自信がこの3週間体を動かしてきたという。技は完全に戻すわけはないが、貫く前向きな感情が何よりの勢いにつながりそうだ。


萱和磨 安定感のダークホース


今季初戦となった試合で手応えをつかんでいるのは、ともに順大からセントラルスポーツに就職した萱和磨(22)と谷川航(22)。萱は3月の英国でのワールドカップで合計83・731点で3位。冬場に磨いた技術を試合で実践でき、今大会への道筋を明るくした。世界選手権の代表について、「昨年は入るためにミスしないことを心がけた。今年は狙って演技をしたい。優勝を狙って演技をしていけるなという感じがある」と平成最後の大会に「萱」の名前を残す意欲をみせた。


谷川航 着地王子


谷川航は昨年大会では、弟翔の優勝を目の当たりにした。「自分もそんなに悪くなかった。鉄棒で落下して悔しかったですが、翔の優勝はうれしかった」と振り返る。今年は始動を早めにし、4月の東京のW杯では85・665点で2位と好結果を残した。「昨年からの構成で、余裕のある構成なので慣れてきた」と上積みは確保している。


田中佑典 美しい体操の求道者


内村と同世代の雄、田中佑典(29=コナミ)は、内村と同じように万全とはいかない現状を強いられている。「痛いところは数カ所。その中では最善の出来だと思います」。オフ期は体と相談しながら、ケガの影響で6種目の難度を落とさざるを得なかった。体現し続ける「美しい体操」で変わらぬ存在感を放ちつつ、「冬場は基本を徹底して土台作りをしてきた。来年新しい技を入れる準備にしたい」と東京五輪までの焦らずにペース配分していくことになる。


大会は26日に予選、28日に決勝が行われ、合計得点で優勝を争う。5月のNHK杯も含めた合計上位3人が世界選手権の代表に選出される。代表の4、5人目は6月の全日本種目別の結果も踏まえて貢献度の高い2人を選考する。