競泳男子200メートル平泳ぎ世界記録保持者渡辺一平(22=トヨタ自動車)は、平成最後の日も泳いでいた。午前7時半、練習拠点である早大・所沢キャンパスのプール。じっくりと3時間の練習を行って、昼食にはビッグサイズのナンとカレーをぱくり。午後1時から休息をとって、再び午後4時から2時間半をプールで過ごした。1日2部練習とトレーニングに余念がない。

実は帰国直後だ。国際水連主催の「チャンピオンズ・スイム・シリーズ」中国大会に出場した。29日午後8時に羽田空港に帰ってきた。それでも午前6時45分起床で練習に向かう。平成最後のレースとなった中国では、金メダル争いの宿敵チュプコフ(ロシア)に直接対決で後れを取った。

「すごく危機感がある。しっかりと今、強化していかないと世界選手権で思い描いているいい結果が出せない」

17年1月に世界記録2分6秒67を樹立。7月の世界選手権韓国大会では「ぶっちぎりで金メダル」を目標に掲げる。渡辺が自己記録を更新すれば、日本スポーツ界にとって「令和最初のワールドレコード」になる可能性がある。

「世界記録を期待されることはとても名誉なことです。『未来への希望』を感じてもらうためにも成し遂げたい」

チャレンジを続ける渡辺にとって、1日1日が勝負だ。

「平成であれ、令和であれ、目指すべき頂は変わらない。ただ希望に満ちあふれた時代になることを心から願ってます。その意味でも東京オリンピック(五輪)は『未来への期待』を感じてもらえるような大会にしなければいけません。スポーツ界の使命だと思っています」。【益田一弘】

◆渡辺一平(わたなべ・いっぺい)1997年(平9)3月18日、大分県生まれ。津久見一中、佐伯鶴城高、早大をへて今春からトヨタ自動車所属。14年ユース五輪200メートル平泳ぎ金。16年リオデジャネイロ五輪準決勝で五輪記録2分7秒22を出したが、決勝は6位。17年1月に世界記録2分6秒67を樹立。同7月の世界選手権で銅メダルを獲得。今年4月の日本選手権は2分7秒02で初優勝を飾った。193センチ、78キロ。