体操の個人総合で争うNHK杯は19日に男子が行われ、4月の全日本選手権を2連覇していた谷川翔(20=順大)が初優勝を飾った。全日本の点数を持ち越す形で競われ、リオデジャネイロ五輪以降を担う新世代の接戦を制した。「僕が引っ張っていくという覚悟を持ってやる」。日本体操界の象徴、この大会を10連覇中だった内村航平はけがに苦しみ、全日本で予選落ち。キング不在の窮地に、20歳に覚悟が芽生えた大会になった。

世界代表の切符を勝ち得たのは3人。谷川翔のほか、兄で2位航(22)、3位萱和磨(22=セントラルスポーツ)。残り2人は6月の全日本種目別選手権(群馬)の成績を踏まえて、チームへの貢献度から選ぶことになるが、3人が軸になる。

求められるのはここからの点数の積み上げになる。NHK杯は全日本の点数を持ち越して順位が決まるが、NHK杯の6種目の演技だけで点数を見ると、谷川翔は84・432点。トップは谷川航の85・698点で、昨年の世界選手権の個人総合決勝に照らせば5位となる。「目標は東京五輪の金メダル」と各自が口にするが、現実的には87点を越えていかなければメダル争いができない。当人たちもそれは十分に理解している。翔は優勝者インタビューで「世界選手権ではいまのままでは戦えない。D(スコア)もE(スコア)も上げて臨みたい」と真っ先に答えている。技の難度を表すDスコア、出来栄え点となるEスコアの両面で向上を求めていく。

順大で翔を指導する原田監督は「今日は後半3種目のEスコアが取れなかった。そこは改善しないと。世界戦に間に合うかわからないですが、Dも上げないと。鉄棒はカッシーナくらい入れないといけないですし、試合で使えるレベルまで仕上げる。跳馬ではロペスも飛ばせる。(Dスコアで)36点見えるか見えないかまで上げられたらいい」を見通す。今大会のDスコアの合計は34・3点で2点弱の上積みがあれば、世界と伍(ご)していけると見る。

全日本、NHK杯を通じて顕著になったのは長く日本体操界をけん引してきたリオ組の厳しい現状だった。東京を見据えた時に、新世代のさらなる台頭がなければ個人総合連覇は見えてこない。各自の覚悟と向上が必須という現実も顕著になった。