【パリ=吉松忠弘】何が大坂をつぶしたのか。世界1位の大坂なおみ(21=日清食品)が、同42位のシニアコバ(チェコ)に4-6、2-6のストレート負けを喫した。18年全米から続いていた4大大会の連勝が16で止まるとともに、18年全米、19年全豪に続く4大大会3大会連続優勝はならなかった。大坂敗退の原因を探る。

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全くの死に体だった。勝ちたいとは思っても、気持ちが上がらず体は動かない。大坂に「今大会は張り詰めっぱなし。疲れた。負けたけど、少しほっとしている」と、思わず言わせるほどの重圧だった。4大大会3大会連続優勝の夢は、ひとまずついえた。

1つのデータがある。優勝した18年全米、19年全豪と、今大会の決定打と凡ミスの数の比較だ。1ゲーム平均で見ると、18年全米の決定打は0・94本、凡ミスは1・02本。19年全豪は1・48本と1・22本。今大会は1・51本と1・59本だ。

興味深いのは、全米、全豪のハードコートより、球足の遅い全仏のクレーの方が決定率が高いことだ。決まりにくい分だけ、これまで以上に強く打つ回数が増え、その分、凡ミスも増えたと想像できる。日本テニス協会の土橋強化本部長も「勝ちたいという裏返し」と言う。

また、フットワークの課題を土橋氏は指摘する。赤土のフットワークの特徴は、滑って打つことだ。「なおみは打ってから滑るが、うまい人は滑ってから打つ」。打って滑ると、その分、戻るのが遅くなる。遅くなるから、球に届くのが半歩遅れ、決め急ぎ凡ミスが増えた。

土橋氏は「全仏は一番、慣れるまで時間がかかる」と、クレーの難しさを強調する。ただ「今のテニス界で、4大大会2連覇できる方が奇跡に近い。全仏の楽しみは取っておきたい」とも話した。

今後は、7月1日開幕のウィンブルドンに向けた芝の大会となる。土橋氏は「芝の方が彼女には向いている。大きく学んで、大きくなるのが大坂」。今大会の敗戦から必ず何かを学び、大坂はテニスの聖地で爆発する。