【パリ=吉松忠弘】世界7位の錦織圭(29=日清食品)が2日に渡る4回戦を制した。同38位のブノワ・ペール(フランス)に6-2、6-7、6-2、6-7、7-5で勝ち、自己最高に並ぶ2年ぶり3度目のベスト8入り。

前日の日没順延で第4セットからの再開で、最終セット1-4、3-5と追い詰められながら逆転。3時間55分の雨中の激戦だった。4日の準々決勝は、日本男子として33年佐藤次郎以来86年ぶりベスト4をかけて、同2位のナダル(スペイン)と対戦する。

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お互い、精も根も尽き果てた。疲労からか足が動かず。エネルギーがなくなり、気力も上がらない。リードするたびに勝ちを意識し、両者ともに心身が縮こまる。ペールは2回戦で4時間33分、錦織は3回戦で4時間26分を戦い、ともにぼろぼろだった。錦織は「最後の方は動けなかった。正直、ファイナルは勝てると思えなかった」と熱闘を振り返った。

奇想天外、何が飛び出すか分からないペールだから、乱戦になった。一方で相手がペールだから勝てたとも言える。最終セット、錦織から2-4、3-5、5オールの時点で、必ず相手のダブルフォールトが飛び出した。完全に助けられた。「ディフェンスの時に100%動けなかった。勝てて良かった」と、何とか勝ちにつなげた。

大きかったのは最終セット、2度のサービスダウンの差にならなかったことだ。1-4の自分のサービスゲームで3度のジュース。1-5になりそうなところを踏ん張った。これが反撃ののろしとなった。

実はこの勝利で、4大大会は18年ウィンブルドンから4大会連続で8強以上の成績を収めた。08年ウィンブルドンで本戦初出場から、自身初めての記録だ。優勝こそないが、高値安定は誇れる成績だ。

次戦は全仏90勝2敗、歴代最多11度の優勝を誇るナダルが相手。普通の状態でも強敵だが「フレッシュな状態は無理」という体力では、厳しい状況には変わりない。ただ「できるだけ戻したい」と死力は尽くす。

試合後、テレビカメラのレンズに「チョレイ!」と書いた。卓球・張本智和の雄たけびだ。張本と面識はないが「張本君みたいにえびぞりでガッツポーズをしたかったが、その力もなかった」。その魂だけは受け継ぎ、次戦のナダルにぶつける。