世界7位の錦織圭(29=日清食品)が全仏11度の優勝を誇る同2位ラファエル・ナダル(スペイン)に1-6、1-6、3-6のストレートで敗れた。日本男子として33年佐藤次郎以来86年ぶりの4強進出を逃したものの、4大大会連続ですべて8強以上という自身初の成績を残した。4回戦の同38位ペール(フランス)戦について、亜大総監督の堀内昌一氏が分析した。

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錦織には3回戦でフルセットを戦った疲労もあったのだろう。特に2日目の第4セット以降は下半身に粘りがなく、鋭いショットも影を潜めていた。雨でボールも重くなっていたはずだ。そこで錦織が選択したのが「ニュートラル」だった。

決定打を狙わなかった。最終セットで1-4とリードされれば、普通はリスクを覚悟で攻めに出る。ところが、錦織のプレーは変わらなかった。コートの両サイド、厳しいところを狙わずボールをつないだ。テニスには攻めと守りに加えて、ニュートラルのボールがある。錦織はこれを多用した。奇想天外なプレーが持ち味のペールに対して「打てる」ボールを返し、ショット選択のミスを誘う。ドロップショットをネットさせ、ボレーを打たせてロブで切り返した。

フルセットの長い試合では実力差が明確に表れる。総合力では錦織が上だ。体調や天候を考慮し、無理に攻めることなくペールを自滅に追い込んだ。錦織はニュートラルなボールを操れるが、ペールにはそれがない。テニスの奥の深さの違いが勝負を分けた。(亜大教授、テニス部総監督)