東京パラリンピックは2021年8月24日に開幕する。実施される全22競技について、有力選手などを紹介する。


■陸上

肢体不自由やまひ、視覚障がいなど対象とする障がいが幅広いため参加人数が最も多い。実施種目やクラスは参加選手数に応じて大会ごとに検討される。障がいクラスが細分化されているため1種目の決勝レースが多く、前回大会の100メートル決勝は男子16、女子14クラス行われた。


■競泳

四肢切断から脳原性まひ、視覚障がい、知的障がいなど多様な障がいを対象とし、障がいの程度や運動機能によって細かくクラス分けされている。日本のメダル最有力競技で、96年アトランタ大会以来5大会で合計20個(金15)のメダルを獲得しているレジェンド成田真由美は今も健在。前回大会で4つのメダル(銀2、銅2)を手にした全盲の木村敬一には金メダルが期待される。


■アーチェリー

第1回ローマ大会から正式競技。肢体不自由の選手が50メートルまたは70メートルの的を狙う。リカーブとコンパウンド、W1の3種目で、男女別の個人戦と混合(男女各1人)が実施される。6月の世界選手権でリカーブ個人で男子の上山友裕、女子の重定知佳が3位となり、東京大会の日本代表に決定。混合団体(車いす)でも日本は4強入りして、個人で男女1枠ずつを確保した。


■バドミントン

東京大会から正式競技。障がいの程度に応じて車いす2クラス、立位4クラスがある。ネットの高さを含めてルールは五輪とほぼ同じだが、車いす2クラスと立位1クラスのみ通常のコートの半分を使う。全種目とも21点3ゲーム制。日本は金メダル有望競技。


■ボッチャ

脳原性疾患による四肢まひなど重い障がい者のために考案された球技で、青と赤の各6個のボールを、投げたり、転がしたりして、目標の白いジャックボールに近づけるかを競う。男女の区別はなく、障がいの内容や程度により4クラスに分けられる。個人戦、ペア戦、団体戦(各3人)がある。日本は16年リオデジャネイロ大会、18年世界選手権で団体で銀メダルを獲得した。


■カヌー

前回大会から正式競技。障害物のない直線コースの個人200メートルスプリントで、1本のパドルで艇の左右を交互にこいで進むカヤック種目が実施された。東京大会ではカヤックより長い艇を使って片側のみをこいで進むヴァー種目が加わる。日本勢では前回大会で8位の地元東京出身の瀬立モニカが、世界選手権で5位に入って代表に決定。本大会で上位進出の期待がかかる。


■自転車

身体障がいと視覚障がいが対象でトラックとロードで複数種目が実施される。四肢障がい、下半身不随、脳性まひ、視覚障がいの4クラスに分かれ、さらに障がいの程度で細分されている。日本は前回大会で視覚障がい者の2人乗りタンデムで鹿沼由理恵が健常者の田中まいとのペアで、ロードで藤田征樹がそれぞれ銀メダル。18年ロード世界選手権では野口佳子が金、銀2つのメダルを獲得ている。


■馬術

肢体不自由者と視覚障がい者が対象で、技の正確さや演技の美しさを競う馬場馬術のみが実施される。個人と団体(3人)、個人の上位選手のみが出場する自由演技がある。男女の別はなく障がいの程度に応じて5つのクラスに分かれている。伝統的に英国を筆頭に欧州勢が強い。前回大会の日本勢は宮路満英のみの出場だったが、東京大会は4つの開催国枠を得ている。


■5人制サッカー

「ブラインドサッカー」と呼ばれるフットサルコートを使う視覚障がい者のサッカー。チームはアイマスクを着用した4人のフィールドプレーヤーとGKで構成され、GKは健常者も務めることができる。音の鳴る鉛の入った特製ボールを使い、選手はボールの音やガイドの声を頼りにプレーする。これまで日本の出場はなかったが、東京大会は開催国枠で初出場する。


■車いすバスケットボール

主に下肢に障がいのある選手を対象にした競技で、ボールやコート、出場人数など基本ルールは五輪とほぼ同じ。選手は障がいの程度によって持ち点が与えられ、コート上の5選手の合計点は14点以内。日本は男子が11回連続出場で7位が最高。前回大会に17歳で出場した鳥海連志ら若手の成長に期待。過去2度銅メダルを手にしている女子は08年北京大会以来の出場。


■車いすフェンシング

下肢に障がいのある選手が、固定された車いす「ピスト」に座り、上半身だけを使って対戦する。ルールは通常のフェンシングとほぼ同じ。障がいの程度によって2カテゴリーがある。個人戦はフルーレ、エペ、サーブルの男女各3種目。東京大会ではフルーレでの3対3の団体戦も実施される。


■車いすラグビー

車いすに乗った四肢に障がいのある選手が4対4で対戦。バスケットボールコートと同じ広さのコートを、丸いボールをパスや膝の上に乗せるなどしてトライラインまで運ぶ。車いすでのタックルが認められている。選手には障がいの程度で持ち点が与えられ、1チームの合計は8点以内。16年リオデジャネイロ大会銅メダルの日本は、18年世界選手権で初の金メダルを獲得した。


■車いすテニス

2バウンドまでの返球が認められている以外はテニスと同じルール。テニスの技術に車いすの操作技術が要求される。男女シングルスとダブルス、3肢まひ以上の重度障がい選手を対象とした男女混合のクアードのカテゴリーがある。日本勢は男子は08年北京大会、12年ロンドン大会と連覇した国枝慎吾、女子は16年リオデジャネイロ大会銅メダルの上地結衣が金メダルを目指す。


■ゴールボール

視覚障がい者の団体球技。バレーボールコートとほぼ同じ広さのコートで3対3で対戦する。攻撃側は相手ゴールを狙って鈴の入ったバスケットボールとほぼ同じ大きさのボールを転がし、守備側は3人が体を投げだしてボールをはじき返す。前後半12分ハーフ。日本勢は女子が04年アテネ大会で銅、12年ロンドン大会で金メダルを獲得。男子は東京大会が初出場となる。


■柔道

視覚障がい者による競技。障がいの程度に応じたクラス分けはなく、男子7階級女子6階級で行われる。両選手が組み合った状態から試合開始する以外は、五輪とほぼ同じルール。日本男子は正式競技となった88年ソウル大会から全大会でメダルを獲得。前回大会は60キロ級の広瀬誠の銀メダルのほか銅メダル2つを獲得。女子は57キロ級の広瀬順子が3位となり、女子史上初のメダルを手にした。


■パワーリフティング

下肢に障がいのある選手があおむけでバーベルを押し上げるベンチプレス競技。3回の試技で最重量を上げた選手が勝者。障がいの程度によるクラス分けはなく、東京大会では男女各10階級を実施。前回大会男子107キロ超級優勝のラーマン(イラン)は健常者の世界記録を20キロ上回る310キロを上げた。日本勢は96年アトランタ大会から出場しているが、メダルはまだない。


■ボート

男女別のシングルスカル、男女ペアのダブルスカル、男女各2人でこぐかじ手つきフォアの3種目。障がいの程度によって3クラスに分けられている。前回大会まで1000メートルだったが、東京大会は五輪と同じ2000メートルの直線コースで競う。


■射撃

肢体不自由の選手が対象で、上肢で銃を保持できるSH1と、上肢で保持できずに支持スタンドを使うSH2の2クラスに分けられる。的までの距離と射撃姿勢によって種目が分かれ、それぞれ男女別と男女混合で競う。東京大会では全13種目が実施される。日本勢のメダルはまだなく、16年リオデジャネイロ大会の代表選手は女子SH2クラスに出場した瀬賀亜希子1人だけだった。


■卓球

第1回の60年ローマ大会から実施されている。肢体不自由と知的障がいに大別され、肢体不自由には車いすと立位があり、障がいの程度に応じて細かくクラス分けされている。


■テコンドー

東京大会から正式競技に採用された。上肢に切断や機能障がいのある選手が対象。頭部への蹴りが禁止されている以外は、五輪とほぼ同じルール。障がいの程度によって4クラスに分かれ、男女各3階級で競う。日本勢では冬季パラリンピックで3大会出場の実績を誇る太田渉子がスキーから転向して、19年世界選手権で58キロ超級で銅メダルを獲得するなどメダル有力候補に名乗りを上げた。


■トライアスロン

前回大会から正式競技。レースの距離は五輪の半分で、スイム(750メートル)、バイク(20キロ)、ラン(5キロ)。障がいの程度などにより座位、立位、視覚障がいなど6クラスに分かれ、そのうち東京大会では男女各4クラスが実施される。前回6位入賞の秦由加子を始め、陸上から転向した谷真海や、前回大会は車いすマラソンで出場した土田和歌子らもメダルの期待がかかる。


■シッティングバレーボール

臀部(でんぶ)を床につけた状態で競技するバレーボールで、プレー中に臀部が床から離れるとファウルになる。1チーム6人で試合は5セットマッチ。1セットは25点先取のラリーポイント制で行われる。コートは五輪より小さく、ネットも低い。東京大会は男女各8チームが出場する。日本は男女とも過去最高が7位で、ともに前回大会出場を逃している。