男子90キロ級で、初出場の向翔一郎(23=ALSOK)が銀メダルを獲得した。2回戦から登場し決勝戦に駒を進めたが、オランダ人選手に敗れた。

枠にはまらない独自のスタイルを貫く「柔道界の異端児」だ。キックボクシング仕込みの頭を左右に振る独特の間合いで相手を揺さぶったり、試合中に髪をかき上げるなど己の道をいく。同階級では向の他、リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)金メダルのベイカー茉秋や前大会銅メダルの長沢憲大、今大会男女混合団体代表の村尾三四郎の実力が拮抗(きっこう)し、4月の全日本選抜体重別選手権では井上監督が「優勝者を代表にする」と決めて、向が選出された。

足技や背負い投げなどの担ぎ技を得意とし、大会ごとに好不調の波がある。不用意に技を掛けて返され“自爆”ということもあり、「我慢の柔道」を心掛けていた。7月のグランプリブダペスト大会では左足の指を骨折。しかし、「自分の回復力は普通とは違う。1カ月かかるところを1週間で治す」と超人的発言していた。日大出身で多くの仲間や関係者に遅刻などで迷惑をかけて「東京五輪で優勝して恩返しする」と意気込みを示していた。

女子70キロで3連覇を狙った新井千鶴(25=三井住友海上)は3回戦で敗退した。

◆柔道の東京五輪代表選考 男女各7階級1人で、選手の準備期間確保を重視した「3段階」による選考で決める。(1)世界選手権優勝者が11月のGS大阪大会を制し、強化委員会で出席者の3分の2以上の賛成で代表入りが決定(2)12月のマスターズ大会(中国)、来年2月のGSパリ大会、GSデュッセルドルフ大会終了時点で、強化委の3分の2以上が1、2番手の差が歴然としていると判断すれば代表選出(3)最終選考は来年4月の全日本選抜体重別選手権で、強化委の過半数の賛成で代表決定する。