体操の全日本シニア選手権が30日に福井県営体育館で行われ、再起戦となった個人総合五輪2連覇の内村航平(30=リンガーハット)が厳しい現実に直面した。

あん馬の落下などがあり、個人総合で83・900点の5位に終わった。4月の全日本選手権を両肩痛の影響で予選落ちし、10月の世界選手権の代表を逃している中、東京五輪への明るい兆しを得られなかった。

最終種目、鉄棒の着地で開かれた両手は、そのまま腰にあてられた。顔をしかめる。大会前に負った腰痛の影響は大きい。「言い訳にできない」としたが、逆襲ののろしをあげる試合にはできなかった。

2種目目のあん馬が鍵だった。全日本では落下し、その後のリズムを崩した。「あれが引き金だったというのがあって、考えすぎた」と心が乱れ、再び落下した。練習では毎日通し練習を繰り返した重点種目の失敗に、疑問が浮かぶ。「練習でできるのに試合でだめ。不思議な感覚。なぜか分からない」。考えが迷路にはまった。最終の鉄棒でもミスが起きた。

試合に合わせる力の欠落を2年以上国際舞台で個人総合に出ていないことに求めたが、改善方法は見いだせない。東京五輪への展望を問われると「ちょっと厳しいんじゃないか、素直に」と力なく笑った。

この結果で青写真の修正も余儀なくされた。11月の個人総合ワールドカップ(W杯)代表選考会に推薦出場して上位に入り、東京五輪に内定する来年の国際大会に出る計画があった。「一番早く決まる可能性があったんですが…。また一からやり直す」と切り替えを強いられた。「どうして力が出せないのか。これからは考える作業ですね」。比類なき経験値を総動員し、解決策を探し求めるしかない。【阿部健吾】

◆内村の東京五輪への道 東京五輪の男子団体代表枠は4。選考方法は最終決定していないが、来春の全日本選手権、NHK杯が選考大会になるとみられる。現時点で内定が明文化されているのは、来年の個人総合W杯4大会の得点を並べ、日本人最上位選手かつ全体3位以内の1人のみ。内村が出場しない10月の世界選手権(ドイツ・シュツットガルト)の成績は関係ない。